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ロフトワーク共同代表 林千晶氏

林千晶が代表取締役を務めるロフトワークは、昨今、注目される「デザイン思考」を創業時から採り入れている。コンセプトを突き詰めるクリエイティブなアプローチによって斬新なプロジェクトをいくつも成功に導いてきた。その立役者たる人材を多数採用してきたロフトワークは、どのようなリクルーティング活動を行っているのだろうか。


「デジタル社会がさらに確立されていくと、多くの企業がその波に奔流され、進むべき道を見失うかもしれません。誰もが検索エンジンを活用して、モノやサービスだけでなく職さえも探し求める時代、企業サイドもあらゆるインターフェイスを有効活用して、ユーザーや求職者と自由なコミュニケーションを図るべきです。人々のエモーショナルな部分にもっと踏み込んでいくべきではないでしょうか」

こう指摘するのは、ロフトワーク代表取締役の林千晶。政府の『「デザイン経営」宣言』の政策指針をまとめたひとりでもある。

「まずは、いままでのビジネスアプローチ(業種としての発想)に疑問を投げかけてみる。すると、プロダクトやサービス完成までのプロセスや求める人材に対するリクルーティングを含め、自社業界の未来予測が変わってくるかもしれません。人々のライフスタイルの変化と真摯に向き合えば、新しい波に乗るための経営戦略が不可欠だと気づくはずです」

そのとき、デザイナーは経営者にとって心強いパートナーになるというのが林の考えだ。

「デザイナーは、単にクライアントのニーズを形にしたり、商品のブランディングをしたりするだけの存在ではありません。ビジネス要件を熟知し、消費者、求職者といったユーザーのインサイトを察知して真の課題を探り出し、本質的なところからコンセプト化して提案する存在です。企業が創造的な活動をしていくうえで、デザイン思考は有効な手段の一つです」

デザイン思考とは、会社の“意志”を実現するための一つの手法であり、新たな取り組みを見つけるためのイノベーションの源泉でもある。そのイノベーションを起こすのは、もちろん、人間である。実際、社会の変容に動じず、会社の姿、形を変えることも厭わずに、新たな挑戦で成功を収めている企業には、確固たる“意志”があるという。



「デザイン経営とも密接に関わってきますが、その“意志”の中には、オフィスのあり方、サービスが生まれるまでのストーリー、社員の思いなども含まれます。例えば、無印良品は日本の民芸や文化の素晴らしさを伝えるために存在している会社だということを自ら発信し、世界中の人々の共感を呼んでいます。その裏には、他国のような大量生産型の文化に物申すというマニフェストがあると思います。その考えに沿って洋服や家具をつくっているので、単に小売業とくくれはしない。ホテル業界に進出するなど、多角的な取り組みを試みていますが、そこには明確な“意志”がある。だから、ユーザーは、無印がいちばん大切にしていることを肌で感じる。その体験(UX)が購買動機につながっていくわけです」

自社のWebサイトを「メディア化」する

デザイン経営の一つの方法として、林は自社のWebサイトをメディア化することを推奨する。オウンドメディアには、その会社の持つ“意志”を主体的に発信し、ユーザーや求職者との関係性を深めていける特性があるからだ。

林が率いるロフトワークが運営するWebサイトを見れば、この会社が過去に何を成し遂げ、どこを目指しているのかが理解できるだろう。自分たちの“意志”を実践する過程を包み隠さずにコンテンツ化することで、メディアとしての機能を果たしているのだ。

たとえば、官民共同事業体「飛騨の森でクマは踊る(ヒダクマ)」の設立。森林再生とものづくりを通して産業を創出し、地域再生に取り組むプロジェクトだ。当初は黒字化が難しいと思われ、設立に乗り気ではなかったが、一度足を踏み入れてすぐ食文化や広葉樹の美しさに心を奪われて、スタートに踏み切った。その過程や思いも正直に発信することで、より地域やプロジェクトの魅力を伝えることに成功している。

ほかにも、企業や大学、あるいは公共機関が抱える課題に対して、社員一人ひとりが創造性を発揮しソリューションにつなげていること。クリエイターが活躍できるように、プロジェクトマネジメントを採り入れていること。自分たちだけではなく、ともに仕事をする人たちの力を信じていること。


写真左はロフトワーク・シニアクリエイティブディレクターの高井勇輝氏。クリエイティブの部署の採用にも関わる。

それらがプロジェクトに携わった社員やクライアントを通して紹介されているので、サイト閲覧者は共感を持って各プロジェクトを知ることができ、ロフトワークの“意志”を知ることができる。それは同社が考える“正しいリクルーティングサイト”の機能も果たしている。

「ロフトワークは自社サイトで会社がやっていることの“全部”を見せる。それがリクルーティングの役割も果たしていると考えます。“全部”というのは、その会社のいいところだけを切り出さないということ。そのようなサイトの情報は信頼できないと思うからです」

自社サイトで、ロフトワークはデザイン会社ともプラットフォーマーとも名乗らず、自らをクリエイティブカンパニーと呼ぶ。それは人間にしかできない創造的な活動にコミットしているからだ。

「意匠としてのデザインのみに取り組みたい人はロフトワークの採用応募には来ないんです。創造的な視点で社会が抱える課題を解決したい、自己実現のためにロフトワークの機能を使いたいという人たちが自然と集まってくるのです」

人材不足が叫ばれるなか、ロフトワークは世界で2万人を超えるクリエイターと関係を築き、創造的なプロジェクトを次々と生み出すことに成功している。

ロフトワークの根幹を支える“クリエイティブ”というコンセプトを明確に打ち出して発信することによって、そこに共感した人が採用に応募してくるいい循環が生まれているのだ。


はやし・ちあき◎早稲田大学商学部、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒。花王を経て、2000年にロフトワークを起業。Webデザイン、ビジネスデザイン、コミュニティデザイン、空間デザインなど、手がけるプロジェクトは年間200件を超える。グローバルに展開するデジタルものづくりカフェ「FabCafe」、素材に向き合うクリエイティブサービス「MTRL(マテリアル)」、クリエイターとの共創を促進するプラットフォーム「AWRD(アワード)」などを運営。MITメディアラボ所長補佐、グッドデザイン賞審査委員、経済産業省 産業構造審議会 製造産業分科会委員も務める。森林再生とものづくりを通じて地域産業創出を目指す官民共同事業体「株式会社飛騨の森でクマは踊る」を岐阜県飛騨市に設立、代表取締役社長に就任。

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