会食と市場の共通点 「人が集う」から共創が生まれる

地元客で賑わうフランス・ニースの市場(筆者撮影)

日本では七草粥の日も終わり、年末年始の祝膳に一息ついたところだと思います。

少し年末を振り返る話になりますが、フランスでは、クリスマスは家族で、ニューイヤーは友達と過ごすと言われています。そしていずれにしても、食卓を囲み、たくさんの話をします。

まずクリスマス。この日はツリーが飾られた家に家族が集い、ディナーを堪能します。食事の内容はこれがまた贅沢で、キャビア、スモークサーモン、フォワグラ、生牡蠣、そして、シャポンというローストチキンを食べる習慣があります。さらに、チーズ、木の形をしたデザート「ブッシュドノエル」……まー、これでもかと言うぐらい食べます。

このシャポンとは雄の去勢鶏で、最低でも生後8カ月を経て屠殺されますが、最後の1カ月間を籠の中で伏せて飼育するため、身質は非常にまろやかで、しっかり脂がのった霜降りになります。これぞまさしく、宴にふさわしい鶏の王様です。

食卓を囲み、話をするということ

ディナーのはじまりはシャンパーニュでの乾杯から。フランスでは「à votre Sante!! ア ヴォトル サンテ!(あなたの健康を!)」と言い、家族の健康を祝います。

そして用意されたアペリティフ(食前用のカナッペ)と共に、緩やかに食事をスタートさせるのですが、お酒も入って少し気持ちよくなってリラックスしてきた頃に、「à table! ア ターブル!」とママの号令が入り、皆がテーブルを囲んで席に着きます。



フランスでも、昔は、毎週日曜日に家族で食事をする習慣があったのですが、日本と同様、時代や社会の変化とともに薄れてきています。しかし、このクリスマスの「à table!」という号令は例外。まるで軍隊の司令官のような声は、厳しくも愛に満ち溢れた魔法のように響き、団らんが始まります。

遠く離れた家族もこの日ばかりは家に集い、自分たちの現状や今後の予定、残りのクリスマスバカンスについてなど、家族のこれからについてよく話します。

その1週間後の大晦日、今度は友人同士で集う日です。ニューイヤーを祝う旅に出たり、または友人宅に集っては、仕事のこと、愛のこと、家族のことなど、様々なことを話し、未来への想像を膨らませます。そしてまた、ここでもたくさんの食事を楽しみます。

人を良くすると書いて「食」、人を良くすることと書いて「食事」、と僕は常々言っていますが、食卓につき共に食事をするというのは、仕事においても、家庭においても非常に重要なことです。一人ではできないことができるようになることもあれば、様々な共創や課題解決もここで生まれます。

ちなみに現在のフランスは、毎週土曜日にはイエローベスト(gilet jeunes)のメンバーが集い、様々な活動をしていますが、これもまた一つの集いで、すごいエネルギーです。

革命の国というイメージがあるフランスですが、今回の「リーダー不在のストライキ」には、政府も大統領も手を焼いていて、たくさんの被害も生まれています。いつまで続くのかはまだわかりませんが、早く話し合いがされ、収束するのを願うばかりです。
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文=松嶋啓介

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