トランプが欧州を「標的」にする狙いと推測される事態

ドナルド・トランプ(Photo by Alex Wong/Getty Images)

アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで昨年11月末から開催された主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は、世界各国の指導者たちが地球規模の重大な問題について、共通の土台を築くことができる機会だった。だが、その実現には至らなかった。

ただ、ドナルド・トランプ米大統領が中国の習近平主席と貿易問題について協議したことは、明るい材料を提供したようにも思われた。両国は少なくとも数カ月間、事態を悪化させるような行動は取らないことで合意した。

中国はもはや新興市場ではない。少なくとも東半球においてはそうだ。同国政府は世界の先進各国と同じルールに従って行動するべきだ。だが、それについて中国の同意を得ることは、難しい仕事になるだろう。

欧州にとっての悪材料

調査会社ギャブカル・リサーチの創設パートナーで最高経営責任者(CEO)のルイ・ギャブは、中国を巡る問題は欧州にとって、悪材料になり得ると指摘している。そして、その理由について次のように説明する。

「信用状況が持続不可能な中国は砂上の楼閣であり、それを倒すために米国がすべきことは、その楼閣を軽く突くことだけだと長々と唱える“打倒中国”を主張する者たちが、トランプを取り囲んでいることは明らかだ。これまでのところ、こうした中国の脆弱性に関する議論は、全く的外れで目あることが証明されている。債務危機と金融危機が差し迫っているとの恐ろしい予測の一方で、中国は依然として、しっかりと自力で立っている」

「それならば、トランプは“勝利”のために何に狙いを定めるべきだろうか?消耗戦となる中国との冷戦が有望ではないなら、欧州が政治的には指導者を、経済的には成長の速度を失う中、同地域(特にその自動車産業と防衛支出額の少なさ)を叩くことがより魅力的に映るようになるかもしれない」

「トランプは向こう数週間のうちに、中国ではなく欧州を問題として取り上げ、非難し始めると考えられる。そして、彼が標的とするのは間違いなく、フランスとドイツだろう。それは、第1次世界大戦の終戦100年記念式典の直後に受けた冷遇への見返りとしてかもしれない。少なくともトランプはこれまでにも、“復讐は冷まして出すのが最高の料理である”ということわざを固く信じていることを言動によって示してきた」
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編集=木内涼子

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