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浜崎あゆみさん

相馬光学は、東京都の西端、西多摩郡日の出町に社屋を構える従業員20数名の会社だ。創業者の浦信夫会長が、高校を卒業後に入社した会社で光分析の機器開発に従事、その後、独立して立ち上げた。現在は社長の座を娘である浦明子氏に譲っている。

「Forbes JAPANスモール・ジャイアンツ アワード」のアドバイザリーボードであるTAMA協会の推薦で、明子社長を訪ねた。中小企業基盤整備機構が提供する受講無料の教育サービス「ビジログ」について説明すると、「そろそろ彼女にも本格的に私の仕事を手伝ってもらわないと」ということで、妹の浜崎あゆみ(本名)さんに受講を勧めた。浜崎さんは、会長の三人姉妹の末っ子、明子社長の妹にあたる。


相馬光学は、主に光による測定器の開発、製造、販売で知られている。特に分光器の技術には長けており、分光器で光を測定することで、物質の見えない部分を可視化する機器を製造。光によって、さまざまな対象を分析、数値化し、私たちが感覚的にとらえているものをデータ化するわけで、ヒット製品としては、近赤外光により食肉の旨味の指標となるオレイン酸を測定する「食肉脂質測定装置」がある。

まもなく市場に投入されるという「PiPiTORO」という製品も控えている。これは、マグロの脂肪含量の測定器で、切ったり刺したりする必要もなく、誰でも簡単に扱うことができ、光を当てての測定なので、対象の部位を傷つけることなく測定できるのが強みである。

誰でもピピッと簡単に測定できることから、「PiPiTORO」と名づけられたが、この命名者が浜崎あゆみさんだ。浜崎さんは、相馬光学では総務部の課長を務めており、経理や人事を担当、社員20数名ということもあり自ら全国を営業に飛び回る姉の明子社長の片腕として、社内での業務を取り仕切っている。

「自分」から発することを学ぶ

浜崎さんが参加したのは、「社会人基礎力」のワークショップだ。感想を尋ねると、いきなりひと言、「衝撃的でした」の答えが返ってきた。浜崎さんは、東京に本社を構える大手アパレルメーカーで結婚するまで働いていたため、社外研修はそこで何度か経験していた。にもかかわらず、「衝撃的」とまで表現するのはどういうことなのだろう。

たった1日の研修でこれほど大きなものを得るとは、浜崎さん自身も思ってなかったらしい。そもそも「社会人基礎力」という講座名からして、社会人としてそれなりのキャリアを積んできた自分が受講するのにふさわしいものなのか、そんな疑問もあったようである。
 
浜崎さんによれば、大手アパレルメーカーで受けた研修は、極めて実践的なものだったという。つまり、企業の戦力に直接つながるような訓練の場であり、企業やビジネスに役立つことに特化したカリキュラムだったようだ。それに対して、「ビジログ」の「社会人基礎力」のワークショップは、参加者個人の側に立ち、職場で働く人間として自分を振り返り、自覚を促すものだったという。

講座名こそ、「社会人基礎力」というものになってはいるが、そこで講師の方から教えられたのは、決してキャリアの浅い人間を対象にしたものではなく、会社人としてなら、誰でも心当たりのあるマインドの持ち方に関するものだったという。



浜崎さんにとって、それは「衝撃を受けたのは、自分の気持ちを見つめよう、という言葉に集約できます。もっと自分を見つめよう、自分の声に耳を傾けよう、自分が何をしたいのかをもう一度考えてみよう、これらの言葉に目を見開かされた思いでした」という。

その浜崎さんの発言は、相馬光学という会社の特徴を彼女から説明してもらうと、理解できる。相馬光学は、創業者の浦信夫会長が、技術畑出身だったことの影響もあるのだろうが、技術部門に人的パワーが注がれている企業である。つまり、技術力が会社の力に大きく貢献しているのである。

一方、浜崎さんは、技術的なことについては、概念的には理解できるものの、理論的に細かいことはわからないという。そこで、自然と、技術の人間の要望をなるべくかなえてあげよう、もっと言えば、技術の人間に迷惑がかからないようにしようという行動傾向が育まれてきたらしい。さらに、三人姉妹の三女というポジションも影響しているのかもしれないとも、自己分析した。

「『末っ子だから、甘えるのが上手だよね』なんて言われるけれど、ぜんぜんそんなことはない。むしろ、まわりが末っ子だからというふうに甘えさせようとしているところがあって、その期待にこたえなきゃと自分を押し殺している部分が多かったのです」

「ビジログ」の「社会人基礎力」のワークショップのグループ学習では、「人を褒める言葉は何ですか」という課題が出たが、このときも「自分は人を褒めるという立場にはない」という認識から、「感謝に何を付け加えればいいのか」ということを考えたそうだ。「ビジログ」の受講者が最初に受ける行動特性診断を浜崎さんに見せてもらうと、診断コメントの最後に「身構えて回答しているようだ」とあり、いろいろと気を遣う性格のようだ。

「とにかく、会社では自分を抑えている部分がこれまであったのです。皆の気持ちを慮り、自分から積極的に動こうとはしなかった。いわば、守りの姿勢ですね。しかし、『ビジログ』の『社会人基礎力』のワークショップに参加して、これからは少しポジティブに物事を進めてみようという気持ちになりました」

浜崎さんが「社会人基礎力」の講座で学んだのは、自分から「take action」するということだった。これまで、周囲の気持ちを忖度していて、どちらかというと行動を起こすのを苦手としていた浜崎さんだが、若い頃は多少やんちゃな性格だったという自分も思い出して、自ら「take action」するという決意を固めたようだった。

ホームページのリニューアルから始める

その結果として、浜崎さんは、自らが担当している会社のホームページのリニューアルを、早速、始めたという。

「小さなことですが、まずそこから始めようと思っています。相馬光学のお客様は、技術部門の専門家が多い。なので、現在うちのホームページは、わかっている人にだけわかるような仕様になっているのです。これは、ある意味、お客様を限定しているのではないかと思いました」

相馬光学では、技術を高めるために大学の研究者とは交流を深めている。研究者たちからは、よく「こういう測定器が欲しいのだけれど、つくることができないか」と求められるようなことが多いという。このような専門家にとっては、これまでのホームページでもよかった。

しかし、実は、相馬光学がつくるような測定器を探しているのは大学の研究者たちだけではない。普段、自社の製品を扱ってくれている商社の人たちも、お客様だ。こういう人たちはそれほど専門的な知識がないことが多いのだ。



「ホームページを、わからない人にもわかる仕様にしたほうがいいなと考えています。そしてその仕事に私は適任なのではないかと思うのです。なぜならば、私もわからない人だから。わからない私がわかるようにつくれば、おのずとわからない人もわかるようなものに仕上がるのではないかって」
 
まさにこれこそ自分から発する「take action」だ。「社会人基礎力」で学んだ、自分が何をしたいか考えるというマインドの持ち方がまさに生きている。そんな、浜崎さんは、ワークショップから帰ってきて、eラーニングによる「ウェブ型」の学習スタイルにもトライしていた。

「ワークショップ型では、1日で一気に詰め込んだ感じがしたので、同じ内容の動画を見て、帰ってから復習しました。ミニテストもあり、振り返るには、このウェブ型も便利ですね。こういうふうに、あとでもう一度勉強し直せるのはいいなと思いました。ワークショップ型に参加したという満足感だけで終わらせることのないようにできるのでありがたいです」

ワークショップ型とウェブ型の併用はなかなか効果絶大なようだ。そして、「ひとつ改良の提案をしてもいいですか」と前置きして、浜崎さんからこんなアドバイスが飛び出した。

「中小企業の社員は、就業中にこういう動画を見るとなると、なかなか音は出せないのです。イヤホンを使えばいいじゃないかと言われるかもしれませんが、デスクトップで作業をしている人間も多く、そういう人はスピーカーからイヤホンに切り替えるのがかなり手間になります。ですから、動画に字幕をつけてもらえるととてもありがたいですね。そうすれば音をミュートすればすみますから」

まさに、これも自分から発する「take action」、ポジティブな建設的アドバイスだ。「ビジログ」の効果が、「ビジログ」のバージョンアップにも役立っているかもしれない。


ビジログ:https://busilog.go.jp/

Promoted by ビジログ 写真=小田駿一

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