このファイバーは高い誘電性を備え、衣料品としての活用にふさわしい耐久性を持っている。スマートウォッチやスマートスピーカーが普及する中で、次にスマート化が進むのは衣料品の分野になると考えられている。誘電性を持つ繊維としては銅線なども考えられるが、銅線を用いて着心地の良い服を作ることは難しい。
そこで研究者らが着目したのが綿やナイロン、ポリエステルなどの繊維が持つ毛細管特性だった。研究者たちは繊維をシルバーのナノワイヤーの溶液に浸し、特殊なプロセスにより繊維の表面をコーティングした。
そこから生まれたのが誘電性を持つ、柔軟な繊維だった。この繊維でウェアラブル機器やスマート衣料の製造が可能になる。
以前からファッションショーの現場ではLEDライトを装着した衣服が用いられてきた。しかし、スマート衣料はこれまで不可能だったイノベーションを可能にする。スマート衣料はスポーツだけでなく軍事面でも活用でき、体温や筋肉の動きのコントロールも可能になる。
Eテキスタイルと呼ばれる特殊繊維は、極寒地や放射線量の高い状況での活用も想定され、宇宙旅行での活用も期待される。研究チームは誘電性ファイバーの開発にあたり、複数のメソッドのトライアルを重ねているが、なかでも良い結果を生み出しているのが、蒸着法やスプレー式のコーティングだという。ただし、大量生産にふさわしい低コストの製造法はまだ見つかっていないという。