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2019.01.09 11:00

ワイヤレス給電目指せ世界一 ビー・アンド・プラス社員が覚醒したワークショップ

左より池野有紀さん 前村琴路さん 大谷和也さん 鈴木拓真さん

左より池野有紀さん 前村琴路さん 大谷和也さん 鈴木拓真さん

ビー・アンド・プラスは、2018年の「Forbes JAPANスモール・ジャイアンツ アワード」で、「グローバル賞」を受賞した。文字通り、中小企業でありながら、ワイヤレス給電の分野で世界一を目指すという、スモール・ジャイアンツにふさわしい攻めの経営が評価されたものだ。

しかし、スモールであるがゆえの企業の課題もある。社員数は90余名、世界を目標とするにはそれに適う人材も必要となるが、社内にはまだ確固とした育成プログラムはない。人材育成には時間もコストもかかる。中小企業庁が提供する「ビジログ」に多大な興味を示したのは、どうやら必然のようだった。


ビー・アンド・プラスは埼玉県比企郡小川町にある。東武東上線で池袋から1時間余り、沿線が山々に包まれ始めると、会社のある小川町駅に着く。ビー・アンド・プラスが傑出しているのは、同社がこの分野で世界一を目指すと公言しているワイヤレス給電(非接触電力伝送)の開発である。

この方針はリーン・スタートアップという、顧客の要望に段階的に応えていく開発方法を、亀田篤志社長が営業戦略に取り入れたことがきっかけとなっている。これにより、顧客の要求に、柔軟に対応することが可能になり、交渉にも軽やかなフットワークが生まれた。

ワイヤレス給電と聞くと、プラグインなしに行う携帯電話の充電を思い浮かべる人が多いのだが、ビー・アンド・プラスが扱うのは、大手自動車メーカーの製造ラインから、手術室の医療機器、さらには合鴨農法の鳥形ロボットまで、実に多肢にわたる。大手企業にはにわかには手を出せないが、顧客の要望に応じて、ワイヤレス技術をカスタマイズした製品をつくりだしている。
 
ワイヤレス給電世界一を目指す同社であるが、本格的な社員研修プログラムの導入には踏み切ることがなかった。しかも、2015年には亀田が三代目社長に就任した際に、亀田より年上の東京営業部の職員5名が一斉に退職。本社も合わせ13名いた営業のうち、半数近くが会社を去り、営業や総務関係は社員の年齢が若返った。そんな背景もあり、なかなか社員教育を行う機会がなく、そこで今回、亀田社長は、「ビジログ」のワークショップへ、若手社員4名を出席させることにした。

性格は変えられないが、行動は変えられる

ビー・アンド・プラスの社員、男女4名が出席したのは、「社会人基礎力」と「キャリア・オーナーシップ」のワークショップである。「社会人基礎力」は、行動特性診断をもとに自分を見つめ直し、よりよく仕事をするための気づきを得るためのもの。「キャリア・オーナーシップ」は、前者を踏まえたうえで、今後の自分のキャリアをどのようにイメージするべきかに焦点を合わせたものだ。



参加した4名は、男性2名が営業職、女性は総務管理部門と製造部門からそれぞれ1名。各自、ウェブを通じて行動特性診断を受け、その結果を携えての参加だ。
 
「ふだん付き合いのない別の会社の人と、上下関係のない状態でざっくばらんに話し合えたので、いろんな『気づき』をもらえました」と語るのは総務・経理部門の前村さんだ。事前に行った「ビジログ」の行動特性診断では、彼女は、ストレスに強いというか、ストレスに鈍感とも解釈できる結果が出ていたという。


前村琴路さん

「ストレスがないのは、そもそも私が自分の意見を言わないので、軋轢が生じようがないからなのでしょうね。空気を読みすぎるきらいがあるみたいで」と語る前村さんだが、「社会人基礎力」の講師の先生から「相手に意見を言うことは、相手を傷つけることとはちがう」と直言されたという。この言葉で前村さんの意識が変わった。

ビー・アンド・プラスのような顧客の依頼に対して、その都度、製品を開発していく多種少量の製造業の場合、クリエイティビティが求められる。そのため指示待ちのような問題処理型の組織から問題提起型の組織へと脱皮していく必要がある。もちろん、それには社員一人ひとりの意識転換が必要であり、前村さんのこの意識の変化は、自律型の発想で仕事に取り組んでいく貴重なきっかけとなるはずだ。
 
もうひとりの女性社員の製造部門の池野有紀さんも、「社会人基礎力」のワークショップでこれまでにない刺激を受けたようだ。

「私は自分が引っ込み思案だと自覚していました」という彼女は、講師からこう言われたという。「性格は変えられない(変えることは難しい)が、行動は変えられる」と。

「他社から参加した人のなかに面白い人がいて、販売もSEも経理もこなす不動産会社の人でしたが、私がいつも見ているのとは異なる視点からものを見ているのだなと感じました」と前出の前野さんは語る。「ビジログ」のワークショップの利点は、講師と直接コミュニケーションできることもあるが、参加者どうしの交流もたいへん魅力的なようだ。

「6秒ルール」を実践したい

2名の男性社員はともに営業職だ。営業部門は、どんな企業でもプレッシャーが強くかかり、ストレスをため込みやすい。「僕は行動特性診断で、ストレスに弱いと出てしまったのです。やはりそうなのだなと確認しました」と語るのは、大谷和也さんだ。「ただ、講師の方から『6秒ルール』というアイデアを紹介していただき、これは強く印象に残り、これからも実践しようと思っています」


大谷和也さん

「6秒ルール」はアンガーマネジメントの方法として知られている。「アンガー」、つまり「怒り」という感情は急激に盛り上がりピークを迎えるが、その後、すぐに急激に減衰する。「ついカッとなって」の行動は、このピークのさなかにアクションを起こしているわけで、このような行動は、のちに後悔することがとても多い。そこで、ゆっくり6秒数えて、怒りの対象から心を逸らして、それが静まるのを待ってから、どのような行動をとるべきかを決めるほうがよいというある種の心得である。

営業職には、エネルギッシュに顧客を開拓していくバイタリティーは必要だが、それとともに目的を黙々と遂行する忍耐強さと冷静さも求められる。アンガーマネジメントのひとつである「6秒ルール」と、前出の「性格は変えられないが、行動は変えられる」という講師の言葉は、かなり大谷さんの胸にも響いたはずだ。

もうひとりの営業職の鈴木拓真さんは、ビー・アンド・プラスに転職してきてまだ1年足らず。前の会社では生産管理部門にいたという。鈴木さんは、自分の課題は積極性にあると気づいたという。営業職には積極性が求められるが、鈴木さんは、ついつい指示を待ってしまうという自分のウィークポイントを、「社会人基礎力」のワークショップで自覚したという。


鈴木拓真さん

「チームとして働くなかで、自分をどういうふうに前面へと押し出していくのかが自分の課題なのです。つまり、お客様に対する前に、チーム内でのコミュニケーション力のアップをしなければならないのだなと思いました。ワークショップに参加して、感情を表現するボキャブラリーが少ないということを講師の方から指摘していただき、自分なりの改善ポイントが見えました」

自分を物語化する「キャリア・オーナーシップ」

「社会人基礎力」のワークショップは、いまの自分を見つめ、そのことによってなんらかの「気づき」を対話のなかから引き出そうというものだ。確かに、これはOJT(On-the-Job Training)のなかからは生まれにくい体験だろう。「キャリア・オーナーシップ」では、この「社会人基礎力」で発現されたものを、さらに進化するかたちで、個人の自律を促すメニューが組まれていた。

「まず自分のこれまでの人生の山や谷をイメージすることから始まりました。さらに、3年後の自分のいいイメージを思い浮かべ、グループで語り合って、それを講師の方に講評していただきました」と前出の大谷さん。これは、いわば自分の人生の物語化とでもいうべき作業だろう。

「社会人基礎力」のワークショップは、現時点での自分を見つめることに重点を置いていた。つまり、「点」で自分をとらえる。これに対して、「キャリア・オーナーシップ」は物語という「線」で自分を捉え直そうという試みのようだ。

これまでの人生の物語化に加えて、望ましい自分の未来を物語として追加するわけである。「良いイメージを思い浮かべることで、その可能性が高くなるということを教えられて、気持ちが軽やかになった」と4名それぞれが語ったことからも、この「キャリア・オーナーシップ」のワークショップは、かなり自律的発想へと個々の意識を導くものだったようだ。

「ビジログ」のワークショップを受けて、4名の意識もかなり変わったようだ。「3年後、自分の望ましい未来はどのようなものか」を訊くと、「いまの部門で自分にやれないことはないようにしたい」、「ロサンゼルスの支社で働いてみたい」、「お客様の具体的な要求に応えるだけではなく、こちらからアイデアを提供して、満足を引き出したい」、「生産管理部門に移ってやってみたい」と、各々、自分の未来を具体的にイメージするようになっていた。

印象的だったのは池野さんの答えだ。「これまでは、3年後の自分なんて想像もできなかったのですが、このワークショップを通じてイメージすることができるようになりました。私のいる製造部門は、人的な負担がかなり大きな部門なのです。もし、できるならば、その負担を軽減するようなシステムを考案して、会社に提案し、また導入できる責任を負えるような自分になっていたいですね」


池野有紀さん

実は、「ビジログ」は、30代から50代までの、中小企業の中核人材を育成する狙いでつくられている。全体システム設計を担当した株式会社デジタル・ナレッジの吉田自由児代表取締役COOは、次のように語る。

「単に知識を教えるのではなく、eラーニングやワークショップを通して、机上の空論ではなく、実践的に学べるようにと『ビジログ』はつくられています。それと、受講者個人個人のモチベーションを上げることにもフォーカスされています。例えば、何のために働くのか、人生の目標をどこに設定するのか、『社会人基礎力』や『キャリア・オーナーシップ』の講座では、そのことが中心となっています」

亀田社長はビー・アンド・プラスの社長になって3年が経つが、その間、「ワイヤレス給電世界一」の目標を掲げ、実に10回にも及ぶ組織改編を行ってきた。前述した東京営業部の閉鎖も、そのひとつとして数えられるが、それらの社内改革にも、中小企業では個人のモチベーションが重要であるという亀田社長の持論が生きている。

「とにかく会社を固定化させないようにと考えています。中小企業は大企業と違って、一人ひとりが変わると、会社は激変していく。社員一人の変化が及ぼす影響は、大企業とは比べものにならないくらい大きい。組織を変えていくことで、新しいものに挑戦していく態勢を整えていく。このことは、次の日本をつくることにもつながっていくと考えています」

亀田社長によれば、今回の「ビジログ」のワークショップへの参加で、それぞれ社員は新しい視点や気づきを得てきたという。「まだ社内に人材教育という土台をつくっていない」と語る亀田社長にとっても、「ビジログ」は大きな刺激となったようだ。


ビジログ:https://busilog.go.jp/

Promoted by ビジログ 写真=小田駿一

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