元の会社で経営コンサルをしていたということもあって、その手腕を遺憾なく発揮、わずか数年で日仏商会を立て直すと、会社の新事業として、今度は美容室の経営に乗り出した。ここでも瞬く間に成功をおさめ、神戸でNo.1の美容室となる。そして、満を持してスタートしたのがかっこいい床屋、バーバーの経営であった。
結野さんが、2015年に神戸にオープンさせたのが、「MERICAN BARBERSHOP(メリケンバーバーショップ)」だ。この店ではカットを待つ間、クラフトビールや神戸の人気店で焙煎されたコーヒーを楽しむことができるのだ。もちろん、髪を切らずに、ドリンクだけ飲みに来たって構わない。
Photo_Keta Tamamura
本家アメリカのバーバー文化を意識したこのスタイルは、神戸の男たちの心をつかみ、一躍、人気店に。2018年4月には、福岡に2号店もオープンさせた。さらに福岡店では、神戸店で叶わなかった結野さんの理想のバーバーを実現させた。
それは「バー×床屋×喫茶店」。僕がブリッュセルで見つけた「Bar×Barber」のさらに一歩先を行き、床屋のなかにバーラウンジだけでなく喫茶スペースも併設したのだ。もうじき開店して1年だが、こちらの客足も順調だという。
日本の床屋文化を守りたい
順風満帆にみえる結野さんの事業だが、本家アメリカの大人気バーバーの日本での権利取得に失敗するなど、痛い目もみている。考えてみれば、床屋文化も喫茶店文化も、今の日本ではなかなかに廃れ気味な文化だ。それらを敢えて新規事業として扱う理由はどこにあるのだろうか。
「それはね、昔から好きだったんです、床屋も喫茶店も。あの雰囲気がかっこいいというか。小さい頃、よくおじいちゃんと行っていました。だからこそ、日本の床屋文化を守りたいんです。やっぱりね、人が集まる場所は大事だと思うんです。床屋にも喫茶店にも人が集まるじゃないですか。そこから新たな文化や価値、プロダクトが生まれてきたわけで。そうゆう場所をつくりたかったんです」
なるほど、確かに100年前のパリだって、人々はカフェに集まり、そこから多くの偉人たちが輩出した。カフェに偉人が集まるのか、あるいはカフェが偉人を育てるのか。そのどちらなのかはわからないが、カフェから新たな文化が生み出されてきたことは間違いない。そのような場所が、日本では床屋であり、喫茶店であったのだろう。
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時代は変われども、人が集まるところから新しいものが生まれるという真理は変わらない。結野さんはこんな話も聞かせてくれた。
「僕の前職は、企業向けソフトウェアの世界シェアNo.1企業で経営コンサルをしていたんですが、その会社がブルーボトルコーヒーと組んで、シリコンバレーにカフェを開いたんです」