「ソーシャルハブにしたい」 日本の床屋を復活させた3代目の挑戦

日仏商会の3代目、結野多久也さんが経営するバーx床屋の「MERICAN BARBERSHOP 福岡」(Photo_Keta Tamamura)


「カフェの売り上げなんて、会社の利益からしたらたいしたことないのに、何故わざわざカフェを開いたかというと、そこで新しい起業家のコミュニティをつくりたかったからなんです。自分たちのような古くからある企業が、シリコンバレーに集まる新しいアイディアを持った人たちと出会うには、カフェがいちばん都合良かったっていう。あと、カフェにはさらにメリットがあって、店に来るエンジニアたちが新しく会社を設立するとき、うちの会社のシステムを使ってくれるんですよ。そうすると、ここでもカフェが利益を生んでくれるという」

世界の最先端を行くシリコンバレーであっても、結局は人と人との繋がりである。カフェという人が集まる場所が、新たなアイディアやビジネスを生むのだ。もちろん、この「戦略」は、結野さんのバーバーにも生かされている。

「うちの会社は、本業は美容用品の商社です。でも、ただ理容室や美容室に商品を卸すだけではビジネスにも限りがある。だからこそバーバーを始めたんです。でも、バーバーだけだと、他と差別化できません」

では、どうやってカットに付加価値をつけるのか。そこで、バーや喫茶店を併設して人を呼び込めるようにしたという。

「人が集まってくれば、知名度が上がって、店のブランド力も上がる。ブランド力が上がってきたら、そこで自分たちの本業の強みを生かすんです。実はいま、お店オリジナルのポマードなど、メンズグルーミングを開発しています。バーバーにしっかりとしたブランド力をつければ、自社商品も売れる。バーバーの運営が本業にも還元されます」

ソーシャルハブのような店に

実は、僕はポマードなんて生まれてこのかた使ったことがない。でも、結野さんの口からポマードという単語が出ると、なんだかそれがすごく新鮮な響きを感じた。そもそも結野さんの風貌からは、「床屋の経営者」なんて雰囲気は微塵も感じられない。いい意味でこれまでの床屋のイメージを裏切ってくれる。

そういえば、もう10何年も床屋に行っていない。たいした理由はないけれど、ついつい美容室を選んでしまっていた。僕のように、なんとなく美容室に通ってしまう男性は、世に数多いることだろう。そんな男性こそが、結野さんのバーバーのターゲットだ。

「理容なのか美容なのかって、お客さんには関係ないじゃないですか。だから、とにかくかっこいいバーバーをつくって、床屋と美容室のボーダーをなくしたいんです。それで、いろんな人が集まるソーシャルハブみたいな店になれば最高ですね」


Photo_Keta Tamamura

今年、MLBのスーパースター、ブライス・ハーパーがバーバーショップチェーンとパートナー契約を結んだ。バスケットボールにとどまらず、バーバー×スポーツ選手という組み合わせは、ますます広がりを見せている。

実は、結野さんの神戸のお店には、サッカーチームのヴィッセル神戸に所属するあの世界的なスーパースターも頻繁にやって来るという。もしかしたら、来年には福岡のお店で、サガン鳥栖のスーパースターの姿も見られるかもしれない。

連載:世界漫遊の放送作家が教える「旅番組の舞台裏」
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文=鍵和田昇

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