日本は2月以降、米国と貿易協定締結に向けた本格的な交渉を始める。トランプ氏の狙いは支持基盤である製造業労働者にアピールできる成果であり、日本に対する自動車輸出の数量規制などを持ち出しかねない。
米側はそのうえで、日本と中国が軸となる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉を念頭に入れて、日本に対して中国製品の輸入制限やFTA(自由貿易協定)締結を阻止する条項を迫ってくるとの見方も出ている。
日本側は20年の米大統領選が本格化する「今年11月までにトランプ政権と協議をまとめたい」(交渉関係者)考えだが、越年すれば、大統領選を戦うトランプ氏が貿易問題を安全保障問題とリンケージさせ、在日米軍駐留費の「全額負担」を再び持ち出してくるとの懸念もある。
隣の韓国では、在韓米軍の駐留経費をめぐる米側との協議がまとまらず、協定の期限が切れる事態に陥っている。米メディアによると、トランプ氏は経費負担を2倍に増額するよう文在寅政権に迫っている。20年度末に協定期限が切れる日本にとっても、他人事ではない。
ロシア疑惑追及で2月にも報告書
米紙ニューヨーク・タイムズによると、トランプ氏は自分の思い通りにならないと、側近らに対して、「どうしようもないばか者ども(Feaking idiots!)」とののしるという。政権発足時にいたホワイトハウス高官の「65%が既に辞めた」(米ブルッキングス研究所)のもうなずけるが、最近になってその振る舞いは常軌を逸してきている。
米政府機関が閉鎖されたのは、トランプ氏が、メキシコとの国境にコンクリート製の壁を建設するプロジェクトで、50億ドル(約5600億円)を下回る予算を受け入れないためだ。「トランプ閉鎖」(ペロシ下院議長)が米株価下落の一因なのにもかかわらず、トランプ氏は、米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長の解任を模索しているとされる。
トランプ氏の「狂気」の背景には、ロシア疑惑をめぐる捜査が正念場を迎えていることへの焦りがある。一部米メディアは2月中旬にもロバート・モラー特別検察官が捜査の最終報告書を司法省に提出すると伝えた。
ロシア疑惑は16年の大統領選をめぐり、トランプ陣営とロシア政府が共謀し、民主党のクリントン候補に不利になるよう干渉したとされる問題。大統領弾劾の要件である「反逆罪、収賄罪その他の重大な罪または軽罪」に当たると議会が判断するかどうかは、報告書の内容次第だ。
2019年、「トランプ・リスク」という火種がますます増大するなか、トランプ氏はあくまで自国優先の「公約」を追求することで、岩盤支持者をつなぎとめ、自らのシールド(盾)にしていくとみられている。
連載:ニュースワイヤーの一本
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