トランプ氏は、自身のさまざまな疑惑に迫る捜査と翌20年の大統領選を両にらみし、看板の「自国第一主義」を内外で一段と先鋭化するとみられている。ハイテク分野で覇権争いをしている中国は言うまでもなく、同盟国の日本をも標的にする可能性がある。
捨てられる同盟
海兵隊出身で、その勇敢さから「Mad Dog(狂犬)」の異名で恐れられてきたマティス氏は、知的な戦略家として知られる。17年1月の国防長官就任後の最初の記者会見で、マティス氏が「ジムと呼んでくれ」と落ち着いた口調で話したのは、とても印象的だった。
日本人の多くは忘れているかもしれないが、マティス氏はその年の2月、トランプ政権の主要閣僚として早々と来日し、「米軍駐留費の負担は日本がお手本だ」と明言。トランプ氏が16年の大統領選中に、日本など米軍が駐留する同盟国に「経費の全額負担を求める」と主張していたことから、安倍政権はマティス氏の発言に胸をなで下ろした。
しかし、イラン核合意からの離脱、米韓合同軍事演習の中止など、同盟国を軽視するトランプとマティス両氏の確執は強まり、18年末に米軍のシリア撤収開始で関係は完全に破綻した。トランプ氏が突然ぶち上げた米軍のシリア撤収は、過激派組織「イスラム国」(IS)掃討戦で支援してきたシリア北部のクルド人民兵組織、人民防衛部隊(YPG)を「見捨てる」ことを意味する。
米国が内向きになるのは、トランプ政権が初めてではない。歴史的には第一次世界大戦後から第二次大戦勃発までの孤立主義、戦後は欧州、アジアの米軍を大幅に削減したニクソン政権や、国内経済を優先させたクリントン政権がある。第一次世界大戦後の孤立主義は欧州でのファシズム出現を許し、冷戦終結後の1990年代には、アフガニスタンで旧ソ連軍と戦っていたイスラム義勇兵への支援をやめた結果、テロ組織「アルカイダ」が誕生した。
マティス氏は、辞任の書簡で「同盟関係を維持し、同盟国に敬意を示さなければ、われわれの利益を守ることも、その役割を効率的に果たすこともできない」と警告。これに対し、トランプ氏は、年末に電撃したイラクで、記者団に「ほとんどの人が聞いたことのない国にも米軍は展開している。ばかげている」とまくし立てた。
米中から「踏み絵」を突きつけられる日本
東アジアに目を移すと、トランプ氏が仕掛けた貿易戦争(高関税攻勢)への対応に追われているのは、まず中国で、次いで日本となる。米中両国は1月7、8の両日、中国で次官級の貿易協議を開き、知的財産権保護など中国の構造改革を議論するが、難航が予想されている。
米中対立が深刻なのは、これが単なる貿易摩擦ではなく、次世代通信規格「5G」をめぐる覇権争いであり、安全保障分野にまで及ぶ中国の「超大国化」に伴う構造的な衝突だからだ。一方、日本は今後、米中の双方からどちらを重視するのか「踏み絵」を突きつけられるかもしれない。