だが、数カ月前に北米自由貿易協定(NAFTA)の改定が合意されたときと同じように、米中両国はこの先、金融市場とグローバル企業のため、互いに交渉のテーブルに着くことになると考えられる。そうなれば、2019年の世界経済にとって最大の問題となるのは、米中の貿易戦争ではなくなるかもしれない。
「利上げと金融緩和」が問題に?
その代わりに、今年最も懸念されることになる可能性があるのは次に挙げるようなことだ。まず、企業の倒産件数の増加だ。これは、引き上げられた生活水準を維持するために外国資本に大きく依存度する新興市場で、銀行の破綻を増やすことになり得る。
そう考えられる理由は、中央銀行が利上げを行い、金融緩和策を終わらせる可能性があることだ。需要と供給はこれまで、いずれも世界的な金融緩和によって引き上げられてきた。
需要側をみれば、金融緩和は消費者による借り入れの増加を促してきた。例えば、中国の家計負債の対国内総生産(GDP)比は2008年の18%前後から、2018年には50%以上にまで急上昇した。また、企業部門の債務残高のGDP比も非常に高い割合になっている。
一方、供給側をみれば、金融緩和は企業や起業家に低利益のビジネス機会を追求させることになってきた。例えば、セントルイス連邦準備銀行によれば、米国の設備稼働率(全産業)は、2009年の約67%から2011年には80%近くにまで上昇した。
また、全米独立企業連盟(NFIB)が発表する「NFIB中小企業楽観指数」は昨年、108に上昇。金利の引き下げが行われたレーガン政権時以来、最も高い水準となっている。この指数は、2009年には80程度だった。
つまり、世界経済は金融緩和によって高成長のサイクルに入った。だが、ここ数カ月で状況は変わった。中央銀行は金利を引き上げ始め、資金はこれまでのようには供給されなくなる。そして、これは需要と供給の双方を押し下げると考えられる。
資金の供給が止まることを需要側からみれば、消費者の借り入れが困難になるということだ。供給側をみれば、低収益でビジネスを行ってきた企業を崖から突き落とすことにもなり得る。
要するに、金融緩和をやめて資金の供給を減らすことは、世界経済を低成長へと向かわせていくということだ。消費者がお金を借りないことは支出を減らすことであり、支出しないということは、企業の破産を招く可能性がある。
これは、連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを続けた後、米国経済が2008~09年に不況に陥ったときにも起きたことだ。米国では、最も多い四半期で企業の破産が6000件を超え、銀行の破綻が157件に達した。
デイリーFXの為替アナリストは、「FRBがタカ派的な姿勢を維持する中で、中国と日本の経済成長の鈍化が世界経済の成長の重しになる可能性がある。そのことが、新興国市場にエクスポージャーを持つあらゆる投資家をいら立たせている」と話している。
こうした問題は、世界中で広まる反グローバリズムによってさらに悪化することになる。そして、そのことが2019年の世界経済に関する悲観論を増幅させている。