ポジティブな破壊者として見られるかどうかを考えるもう一つの方法は、人々のモチベーションを見定めることだ。
従業員の行動を促す主なモチベーション要因は「達成」、「権力」、「所属」、「安全確保」、「冒険」の5つだ。リーダーシップIQが実施したインターネット調査「あなたがモチベーションを感じるものは?」では、2万人以上の回答者のうち、やる気の糧が安全確保だという人は26%だったが、冒険と答えた人はわずか16%だった。
安全確保を原動力とする人は、仕事・作業・給料に継続性や一貫性、予想可能性を求めていて、同じ会社や職位、部署に長くとどまりたいと思っているかもしれない。安全さを強く求める人は、変化に不安を抱くことが多い。こうした人材にとって、破壊的な変革は受け入れがたいものなのだ。
それとは対照的に、冒険を求める人はリスクや変化、不確実さからモチベーションを得る。環境や仕事が常に変化することでやりがいを感じるのだ。挑戦が好きで、新しいこと(つまり破壊)を初めてする人になれる機会に飛びつく。冒険を原動力とした優秀な人材は、刺激を求め、常に新しいことをしていたいと考え、常に「最初の人」になり、最前線にいたいと思う。
こうした人には、新しく困難なプロジェクトや仕事を与えよう。それが難しくても、仕事が完璧に定義されていなくても、相手は気にもしないだろう。最新のもので、他とは異なる新しいものでさえあれば、難易度は高ければ高いほどよい。こうした人材は挑戦が好きで、現状を壊したいと思っている。
ではここで、自分の会社の従業員は、安全と冒険のどちらをやる気の源としているか考えてみよう。その答えによって、自分がポジティブな破壊者と見られるか、それともただの破壊者と見られるかが分かるはずだ。
車を運転する際に注意すべきこととして、ヘッドライトの照射範囲内で停止できる速度で運転する、というルールがある。夜間に高速で運転し、ヘッドライトで見える距離よりも停止距離が長くなってしまうと、照射範囲内に飛び出してきたものと衝突してしまう。これを職場での破壊に置き換えると、自分が押し進めようとする破壊に、周囲の人が対応できる以上のリスクと変化が必要な場合、走行速度がヘッドライトの距離を超えてしまう恐れがある。
解決策はもちろん、スピードを少し下げることだ。あなたのもたらす破壊が、画期的なスマホや、体形を実際よりはるかに細く見せる下着でないのならば、きっと同僚や上司、顧客などからの支援が必要になるだろう。でも、あなたがあまりに強引かつ早急にことを進め、単に破壊するためだけに破壊をしようとしていると思われてしまえば、周りはその破壊の実行を阻止することに時間とエネルギーを使うようになるだろう。