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2019.01.06

「欲求反転法」フィンランドに学ぶ最高の休み方

休日なのに抱えている仕事が気になって休んだ気にならない、という多忙な現代人は多いだろう。「心から本当に休む」ためのヒントは、高い幸福度で知られるフィンランドにあった。マズローの欲求段階説に重ねあわせながら考えると、それが必ず機能する理由が見えてきた。


今更ですが夏休み、とりましたか? 私の周りで忙しい人は、夏休みといいつつも、実質の秋休みや冬休みをとる人もチラホラ見かけます。昨今の働き方改革のあおりを受けて、残業削減だけではなく、積極的な休暇取得もにわかに重要視されつつあります。「素直に休みやすくなった」という声もあれば、「仕事が終わってないから休むに休み切れない……」なんて声も。

たとえ休みをとっていても、ココロから休めていなければ本末転倒ですよね。どうすればしっかり休めるのか?は、ワークスタイルを考える中で重要なテーマでもあります。今回は、「休み方のコツ」についてフィンランドで発見したコンセプトをご紹介します。
 
高い幸福度で知られている、森と湖の国フィンランド。多くの人が数週間ものサマーバケーションをとり、湖畔のサマーコテージ(夏の家)で過ごします。何をするでもなく、家族や友人とゆっくりと美しい夏を謳歌する。我が家も今年の夏休みは、妻が過去に1年住んでいたフィンランドのクオピオにあるサマーコテージでのんびり過ごしました。
 
そこで人生稀に見る、得も言われぬ「幸福感」と「心からの休み」を感じたのです。


フィンランドでは人口550万人に対して50万戸のサマーコテージがあるといわれている
 
それは友人老夫婦の自邸の庭で家族・友人と食事をしているときでした。快適な天気の中にそよ風を感じ、キラキラとした太陽の恵みが白樺からこぼれてくる。友人が燻すスモークサーモンの香りを楽しみながらワインを飲み、子供と犬がはしゃぐ姿を見る……。なぜこんなに幸せなのだろうと考えてみると、過去にもフィンランドでのんびり過ごしたときに感じた経験と共通するのは次の要素でした。

その1 自然を感じる(そよ風・木漏れ日)
その2 食の喜び(スモークサーモンと白ワイン)
その3 信頼と安心(家族や友人との安心した時間)
その4 何もしない(行うのはただただ生きるための活動だけ)
 
自然を感じるだけ、食事だけ、安心感を得るだけでも幸せですが、これらが同時に幾重にも折り重なったハーモニーを「何もしない」ことでしっかりと享受する。そのことが得も言われぬ幸福感につながったようです。 

これはマズローの欲求段階説に重ねあわせてみることができます。マズローの理論では、人間の本質的欲求として下支えしているのが、低次の欲求として括られる生理的欲求、安全欲求、社会的欲求です。その上に高次の欲求である尊厳欲求と、自己実現欲求が存在します。

私がこの夏、家族とフィンランドで過ごした時間の要素は低次の欲求がしっかりと満たされており、高次の欲求は完全にオフ状態でした(思い切ってノートPCを日本に置いてきたのが功を奏しました)。
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文=小柴尊昭 イラストレーション=尾黒ケンジ

この記事は 「Forbes JAPAN 日本の起業家」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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