「我々はスペースXとは違う」 英ロケット企業CEOの静かな野心

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英国が1970年代以来、数十年ぶりに国産の宇宙ロケットを打ち上げようとしている。その任務を担う企業が「Orbex」だ。しかし、同社はこれまで派手な存在感を打ち出すことなく、堅実に歩みを進めてきた。

OrbexのCEOを務めるChris Larmourは次のように述べる。「当社のような小さな企業を、スペースXに例えたがる人は多い。しかし、我々は彼らほど野心的ではないし、私はイーロン・マスクとは違う」

英国本拠の宇宙ロケット開発企業Orbexは、これまでステルスモードで開発を進めてきたが、2018年7月に「控えめ」な形で存在感を発揮し始めた。「控えめというのが最もふさわしい形容詞といえるだろう。なぜなら、Orbexが打ち上げを開始するのは、早くても2021年のことで、我々は独自のやり方でじっくりと開発を進めているからだ」

Orbexは現在、デンマークのコペンハーゲン近郊の施設でロケットエンジンの製造及びテストを実施中だ。同社の従業員は、わずか20数名程度だが2018年7月に3900万ドル(約43億円)の資金を政府と民間から調達した。

Orbexは、米国のロケットラボやイギリスのSkyroraらと並んで、英国政府がスコットランド北部沿岸のサザーランドに建設予定のロケット発射施設から、打ち上げを計画中の企業の一つだ。

英国政府が宇宙ロケット打ち上げを行うのは数十年ぶりのことだ。英国は1971年に国産の人工衛星打ち上げに成功していたが、その後は高コストを理由にプロジェクトを停止していた。

Orbexが開発中の2段式ロケットに関しては、あまり多くが明かされていないが、Primeと呼ばれるテスト機のサイズはスペースXのファルコン9よりもずっと小さく、ロケットラボのElectronロケットと同程度だという。Primeは最大150キロの重量の小型衛星を高度500キロの極軌道に送り込む。

小型衛星分野は近年、競争が高まっており、2017年には重さ600キログラム以下の小型衛星335基が打ち上げられた。これは2012年と比べると6倍の数だった。Orbexは元NASAやESA(欧州宇宙機関)のエンジニアらを引き寄せており、ESAで開発主任を務めたJean-Jacques Dordainも同社に参加している。
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編集=上田裕資

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