しかし、それがドン ペリニヨンほどの世界に冠たるシャンパーニュであり、しかも醸造最高責任者となればその重責とタスクは通常のそれの比ではないだろう。ましてやドン ペリニヨンは作柄のよかった年のブドウのみを使用するプレステージの高いシャンパーニュであり、その年のヴィンテージを造るか、造らぬか──それは醸造最高責任者の肩に重くのしかかる決断である。
今年、ドン ペリニヨンで1990年より28年の長きにわたってシェフ・ド・カーヴ(醸造最高責任者)を務めてきたリシャール・ジェフロワ氏が引退を発表。後継者は2005年よりジェフロワ氏のもとで経験を積んできたヴァンサン・シャプロン氏であると発表された。今後シャプロン氏は既存のヴィンテージといういわば“Living Legacy (生きている遺産)”を継承するのと同時に、新しい方向性を模索していくことになるだろう。
つまりこのドン ぺリニヨン ヴィンテージ2008は、ジェフロワ氏最後のヴィンテージワークとしてワイン史に刻まれる1本。通常商品に先駆けて限定発売されるギフトボックスにはふたりのサインが記され、コレクターにとっても垂涎の品となるに違いない。
プロの視点
“ヴィンテージの個性”を巧みにひきだすドン ペリニヨン。2008年という魅力的なヴィンテージをいち早く堪能できる“レガシー”は、時代の先端をゆくビジネスシーンの先輩方と楽しみたい。シャンパーニュは女性を魅力的に見せてくれるだけでなく、社会で活動するためのエネルギーや自信を与えてくれるもの。シェフ・ド・カーブの継承という大きな節目にリリースされるシャンパーニュだからこそ、大切な節目や記念日にいただいて、これからの活力にしていきたいです(談)。
瀬川あずさ◎㈱食レコ代表。ワインエキスパート、レコール・デュ・ヴァン講師も務める。各種セミナー、イベント出演など多数。