テクノロジー

2019.01.08 07:00

スタートアップ3社が語る「国産SaaS躍進の秘密」 海外企業とどう戦うべきか?


庄田:顧客のビジネスにおける、あらゆるプロセスを健全に進化させられる。これがSaaSの強みだと思います。

例えばHERPであれば、さまざまある採用媒体の候補者情報を自動で取得できるようにすることで、採用担当の手間を大きく減らすことができる。リクナビやWantedly……というように一つひとつ候補者情報を転記していた作業がなくなれば、その時間を採用方針の見直しなど、もっと有効なことに使えますよね。

このように、派手な成果を生み出すのは得意ではないかもしれませんが、その分「ここを改善したらすごく喜ばれた」といった成功体験を積み重ねることができる。

自社のサービスが使いやすくなれば、お客様のビジネスも伸びていく。だからこそ、お客様がどのように仕事をしているのか細かく想像して、サービスを常にアップデートしていかなければならない。まさに鈴木さんが手がけられている「カスタマーサクセス」ですよね。

そのためカスタマーサクセス担当の社員に求められるのは、「誰でも同品質で対応ができる仕組みに落とし込むオペレーション力」です。先ほどカケハシには比較的シニアなメンバーが多いというお話がありましたが、この力は、大企業で培いやすい能力だと考えています。個人的にはSaaSスタートアップでカスタマーサクセス担当として働くことで、大企業での経験が生かせるのではないか、と思っています。

鈴木:ありがとうございます。「健全化」は重要なキーワードですね。

鈴木:SaaSの魅力は、「お客様が感じる価値」と「自社の売り上げ」のベクトルが一致することにあります。お客様に価値を提供し続けてその対価としてお金をもらうので、必然的に長期的な付き合いをすることになります。

その中で伸びている会社というのは、お客様が望む以上の価値を提供している会社。言い換えればお客様のことを知り続けている会社ということでしょう。

中尾:SaaSが面白いのは、お客様が求めているものの一歩先を提供できることだと思います。「その問題はこういうやり方でも解決できるんだよ」と提示できれば、一つの開発アクションで業界の生産性を大幅に上げることができます。

アメリカで上場している会社の業種別INDEXでも、クラウドSaaSの伸びが圧倒的に高かったです。ただ売り上げを伸ばすのではなくお客様に貢献することで、互いに成長していくというカスタマーサクセスの姿勢が、いまの時流にもあっているということではないでしょうか。

買い切り型との違いは、なかなか理解されにくい

鈴木:SaaSの長所ばかりを語ってきましたが、SaaSの導入に苦労することもあるかと思います。レガシーな企業はSaaSの仕組みを理解してくれないこともあるのではないでしょうか?

庄田:特に大企業では、いまだにサービスを「購入する」意識が強いです。そういったある程度の規模感がある企業は導入の判断基準も「〇〇という要件を満たしているかどうか」なので、後からアップデートがあるという点についても理解されづらい。

中尾:ユーザーは将来像よりも、あくまで現在の機能でプロダクトを判断しますからね。特に薬局は一つのサービスを導入したら5〜6年は同じサービスを使い続けるのが当たり前なので、2週間に1度は更新するSaaSのサービスのあり方自体を理解して、期待してもらえるようになってもらう必要がある。これは業界全体で呼びかけなければなりません。

Musubiを導入したお客様もほとんどはポジティブな反応なのですが、機能を変更した後に「なぜ機能を変更したのか」を発信しないと、「どうしてこんな変更をしたのか」と聞かれることはあります。

鈴木:その点でも、お客様とのコミュニケーションが欠かせないということですね。
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文=野口直希 写真=小田駿一

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