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国産SaaS企業だからこそ可能なポジショニングとは?

鈴木:国産SaaS企業の展望についても、少し触れさせてください。ここ数年で海外SaaS企業の日本展開が目立っていますが、僕はこれから国内企業が盛り上がると予想しています。

一番大きな理由は、参入障壁ですね。海外サービスが完全に日本語対応するのは難しいし、日本独自の産業構造にフィットしたサービスへの需要はまだまだある。その意味でも、皆さんのような業界特化型のSaaS企業は今後さらに増えると思います。

中尾:僕は海外企業の参入を意識したことがありません。現在の国民皆保険や薬局業界、薬剤師の状況は日本独自のものなので、海外企業がそれをキャッチアップし、マーケットフィットさせていくのはコスト的にも難しいでしょう。

いまは医療業界でSaaSに注力している日本企業も少ない。日本の医療情報に関わるのは主に、電子カルテを扱う医師側と、僕らが取り組んでいる薬歴薬局側、それにPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)といわれる患者さん側の3種類があり、PHRはSaaSになりにくいといわれています。

さらにその中でも、医師向けより薬局向けのほうがSaaSとしてポテンシャルが高い領域だと僕は考えています。なぜかというと、契約相手が医師の場合、1法人あたり1クリニックというようにチェーン化をしていないため、契約数を獲得するための余分なコストが見込まれるからです。

鈴木:良いポジショニングですね。庄田さんはいかがでしょうか。


HERP 庄田一郎

庄田:言語の問題ももちろんですが、日本ならではのSaaSの選ばれ方があるのではないか、と考えています。アメリカではメリットとデメリットを比較し、ロジカルにサービス選定をする傾向が強い。一方で、日本においてはそれまでの信頼関係や、提供者ごとの想いやストーリーも含めて検討しているように感じます。

HERPも、「業界にこういう問題点があるから、このサービスを作りました」というプロダクト開発の背景とそこに込めた想い(ストーリー)とともに評価いただいている。そんな風に、日本特有とも言える共感という感情面まで設計するのは、海外企業には難しいのではないでしょうか。日本企業は悪い意味で一度導入したサービスをなかなか変えたがらないと言わがちですが、そこにはこういった側面もあると思います。

鈴木:なるほど。ここでもやはり、カスタマーにきちんとサービスの意図を伝えるのが重要だということですね。(後編へつづく)

文=野口直希 写真=小田駿一

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