渦中にいるのが、今年LINEからZOZOのコミュニケーションデザイン室 室長に転職した田端信太郎。ツイッターで17万人以上のフォロワーを抱える、日本屈指のインフルエンサーでもある。
そんな田端に、話題の発表の裏側から現代の企業PR、ブランドの役割まで、気になる話題をネットニュース編集者の中川淳一郎が直撃。11月27日に開催されたPR Table主催イベント「PR3.0」で注目を集めたセッションを、5000文字以上のボリュームでお届けしよう。
前澤社長、破天荒すぎませんか?
中川:まず聞きたいのは、「社長が破天荒すぎることをどう思っているか」。月周回計画を発表した直後にバスキアの絵を123億で買うというのは、社員としてどう思っているんですか? やっぱりZOZOのPRの側面もあるんですか?
田端:前澤の脳内で、間接的な影響を全く考慮に入れていないわけではないと思います。でも、前澤がポケットマネーでやっていることなので。
中川:「もっと従業員に還元しろ」と噛みつく人もいるじゃないですか。
田端:彼個人の出費として、すごくお金がかかったのは間違いないけど、その発表のおかげでよくも悪くも、ZOZOの認知度は世界的にメチャクチャ上がったんですよね。
プライベートブランドとして世界に出るためには、ブランドを体現する具体的な人間が不可欠だと思うんです。アップルにジョブズがいて、シャネルにはココ・シャネルがいるみたいに。
前澤という面白そうな人間がいるとわかるだけで、無色透明なロゴが血の通ったものになるじゃないですか。その意味では、月周回計画も前澤が自腹を切りまくって会社の認知度を上げているともいえる。
中川:前澤さんが破天荒な例をもう一つ。NEWSポストセブンが、フランスで前澤さんと剛力さんのツーショットを公開したら、見事ページビューを稼いでくれた。
実は、その写真で前澤さんがZOZOSUITを着ているんですよね。ディオールのズボンを切って、足元のZOZOSUITをアピールしている。そこまで気さくにパパラッチに応じてくれる人ってほぼいないんです。サービス精神ありすぎですよね。
田端:彼の行動パターンや発想方法を理解するにはコツがあって。実は、前澤はもともとミュージシャンだったんですよ。
彼はずっとバンド活動に没頭していて、早稲田実業学校に入ったけど、早稲田大学に進学する気をなくして、高校2年の頃からはほとんど学校に行かなかったそうです。工事現場で働いたり、スーパーの鮮魚売り場で働いたり、いろんなバイトをして、スタジオ代を工面していた。そのうち趣味が高じて始めた輸入CD・レコードの通販が徐々に拡大して、「だったら服も売ろうぜ」と展開したのがZOZOTOWNなんです。
彼のバックグラウンドはいわゆるビジネスエリートではない。むしろロックスターだと捉えれば、彼の行動パターンは……。
中川:そう。かなり腑に落ちる。
田端:経営者だと思うと、「なんであの人はこんなことやっているの?」と思うけど、ロックスターにしてはいきなりコンサートをドタキャンすることも、楽屋で暴れることもなくて、かなり優しく常識的な人なんですよね。
社長がゴシップネタにされてもいいんですか?
中川:前澤さんがロックスターなのはわかるんですが、彼のツイッターがゴシップネタとしてスクープされてしまうのはいいんですか?
田端:それはしょうがない。どっちかというと問題なのは、ZOZOTOWNの公式アカウントよりも前澤のツイッターに拡散力があることですね。
ZOZOTOWNで服を買ってくれているお客様の中でも、便利な通販サイトとしてZOZOTOWNを使っているだけで前澤友作の活動に興味がないサイレントマジョリティーはいると思うんですよ。一方で、破天荒な前澤の熱烈なファンもいるかもしれない。とてもありがたいのですが、企業として、どちらが本当にありがたいお客様なのかは、かなり難しい問題だと思っています。