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2019.01.04 17:00

ZOZOはなぜPRに力を入れるのか? 田端信太郎が語るメディアとの付き合い方


中川:タレント化してしまって芸人的にいじられる懸念もありますよね。

田端:そうなんですよ。どんどんテレビ出演のオファーが増えているのですが、芸人扱いに近いものも多くて。そういうのはほとんど断っていますが……。

中川:タレント化を抑えようとは思わないの? 個人的にはそういうPRはどうなのと思っているけど。

田端:正直、迷っていますね。もちろん僕がどう考えたところで、彼個人のキャラクターの部分もあるので、最後はコントロールできない部分もありますし。とはいえ、芸能人的な影響力はやっぱりビジネス上の利用価値もあると思っていて。この辺りのバランスをどう取るかは、面白いテーマですね。

社名変更日の日経広告はこうして生まれた

中川:前澤さんが目立ちすぎることで、ZOZOと聞くと前澤さんの顔が浮かぶ人も多いと思うんです。そんな中で10月1日に社名変更日の日経新聞には「拝啓、前澤社長。私たち社員が主役です」という広告を出しました。どういう意図だったんですか?



田端:広告を出すことが決まったのは8月ですが、そのとき「9月に月周回計画の発表があるな」と頭の中で思って。月周回計画発表の約2週間後に社名変更の予定だったんです。

初めは、「代表取締役社長・前澤友作からステークホルダーの皆さまへ」という一般的なやり方もアリかもしれないけど、タイミング的に世の中からは「あ、月に行く人だ」としか思われない。そんなときに社名変更の思いを普通に説いたら、むしろ白々しいんじゃないかと。

中川:なるほどね。

田端:常々思っていることですが、社名やロゴって、それ自体で何かを担保するものじゃない。ただのアイコン、シンボル、概念に過ぎないんです。ある会社を嫌い or 好きになる決め手は、結局そこにいる人間なんですよ。「うちの会社は古臭くて、頭が硬くてダメだよな」というセリフは、会社じゃなくてあなたの上司の頭が固いだけ。

じゃあ社名変更を誰の口から発表すべきか。社長の口から発表すると、聞き手は「あなたは社名変更よりも、今は月周回計画のことで頭がいっぱいですよね」とツッコまれてしまいそうだな、と思いましてね。だったら社員が言うしかないでしょ、と。

テレビやネットで話題になることまで見越していた

田端:日経の新聞広告の狙いでもう一ついうと、前澤は、おそらく世間がもつワンマン社長のイメージほど独裁者ではないんです。最終的に部下の提案を受け入れないことはあるけど、直言した人に「うるさい、黙れ」なんて絶対にいわない。そういう社員と社長との関係性を明らかにするには、公開の場で社員から前澤にツッコんであげるのが一番だと思って。

本当はもっと過激な案もあったんですよ。前澤の顔に落書きするデザインとか。

中川:そんなのもあったんですか(笑)。ネットやテレビが取り上げることも、見越していたんですか。
 
田端:はい。だから、事前に社長がクリエイティブのチェックをしなかったんです。メディアからは絶対に「前澤社長は事前に広告内容をご存じだったんですか?」と質問がくるので、そこで知っていたと答えてしまうと、すごくダサくなる。もちろん、PRで嘘をつくのはNGなので。なので、社長には「社長がクリエイティブを見ると、面白くなくなってしまうサプライズ企画なので、内容は任せてください!」とだけ承認を貰っておきました。

公開されてから前澤に感想を聞いたら、照れ隠し気味に「サプライズが足りないよ。本当に社員が主役だというならみんなでストライキぐらいしなきゃ」と言っていましたよ。
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文=野口直希 写真=PR Table提供

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