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2019.01.04

ZOZOはなぜPRに力を入れるのか? 田端信太郎が語るメディアとの付き合い方

イベント「PR3.0」に登壇したネットニュース編集者 中川淳一郎(左)とZOZOコミュニケーションデザイン室 室長 田端信太郎


「誰かの顔」が思い浮かぶ会社になれ

中川:そもそもなんですが、なぜZOZOはPRに力を入れるんですか? PRで知名度を高めたいのか、それとも働きたいと思う会社にしたいのか。

田端:プラットフォームを運営していただけの頃は無色透明でもよかったのかもしれませんが、プライベートブランドも扱っている今では、ほかのブランドとの違いを示すのが重要です。先ほどもいいましたが、それは誰かの生身の顔を思い浮かべてもらえるようにならなければならない。

だから露出を高めて認知を上げるのは大事ですよね。よくも悪くも前澤は、ライブドア時代の堀江貴文さん以来の「出る杭」になれる人で、いろんな人から面白がられる存在です。本人は「言いたいやつには勝手に言わせておけ」くらいにしか思っていないはずですが。こういう人がいると、ブランドストーリーを一気に想像しやすくなるんですよ。

例えば、既存のサイズとは違う服を発表するときに、真ん中に背の低い前澤が立って、「僕はファッションが大好きだけど、いつもズボンの裾上げで切られる瞬間は屈辱だったんだ」と話すと、ブランドストーリーとしてグッと伝わりやすくなりますよね。

中川:でも、逆風になる可能性もあるじゃないですか。ZOZOは今期の決算発表が減益ですが、そんな時に社長が大金を使ってロシアワールドカップ観戦をしたり、月に行くと言い出したりすれば、マイナスイメージに繋がりますよね。

田端:それこそ「金の亡者だ」と書かれるみたいな(笑)。

中川:そこまで悪くは書かれていないですよ。



田端:彼の発言を全てコントロールできるわけではないし、時にはネガな露出が出るのも仕方ない、覚悟の上と思っています。

それ以上にいま懸念しているのは、メディアっていうのは、良くも悪くも上げておいて、ドスンと落とすのが好きだということ。認知度が上がるほど、これまでと同じことをやっているだけでは話題にならないし、前だったらとやかく言われなかったことでも問題になる。

発表時に派手なことをすれば、それだけメディアへの露出も上がって期待も膨らむ。でもそれだけ畳むべき風呂敷の面積が広がっているともいえます。だから、最初からギリギリ畳めるくらいの風呂敷を広げるよう、バランスはいつも気にしています。

僕は「炎上マーケティングには火加減が大事」と思っています。メディア上での話題の広がり、拡散は自分ではコントロールできないから、結果的に燃えすぎちゃうことがよくあって(笑)。でも、実力以上に露出して期待を高めたせいでブーメランになってしまうとしたら、それはむしろ、当たり前のことだと思いますよ。

田端、ZOZOでの仕事は「マジレス役」

中川:ここからは田端さんご本人の話を聞きたいです。田端さんのZOZOでの役割と、田端さんが来て会社がどう変わったかを聞きたいんです。まず、田端さんはなぜZOZOに転職したのか。また、どんな役割を期待されているのか。

田端:前澤にマジレスする係だと思っています。彼は放っておいたら良かれと思って、どんどんいろんなアイデアを実行するので、「世間の雰囲気的には、ちょっとやりすぎじゃないですかね……?」とブレーキを踏む係。

実は、これを前職のLINEの広報の人に話すと、みんな驚くんです。いままでは僕が暴走して広報がブレーキを踏んでもらう関係だったのに、いまでは逆の立場になったから。

中川:昔は「メディア野郎」を自称していましたが、「コミュニケーション野郎」になりつつありますね。では、これからPRパーソンはどういうふうに生きていけばいいのかでしょうか。会社の中で、どうやって主役になるべきなのか。
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文=野口直希 写真=PR Table提供

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