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2019.01.03 17:30

Armとの巨額M&Aの背景 |トレジャーデータ #日本のスタートアップ図鑑


芳川と太田の出会いは09年にさかのぼる。三井物産の投資担当としてシリコンバレーに駐在していた芳川は、現地のスタートアップを売り込もうと日本でイベントを開いた。そのイベントを日本側で運営していたのが、当時プリファード・ネットワークスの前身企業でCTOを務めていた太田だった。

意気投合した二人は、天才エンジニアの古橋を誘って3人でトレジャーデータを立ち上げる。起業後、さっそくビッグチャンスが訪れる。知人のツテで、著名な投資家ビル・タイとの面会に漕ぎつけた。

ビルの投資をきっかけに、シスコシステムズの元M&A担当重役でSFジャイアンツのオーナーの一人であるダン・シャインマンや、米ヤフー創業者のジェリー・ヤンなどのいわゆるスーパーエンジェル投資家ともつながりができ、次々に投資が決まった。名だたる投資家から支援を受けられたのは「とにかく動いてみた。やってみたら運がこっちにやってきた。運が良かっただけ」(芳川)と、本人たちは謙遜する。

起業にあたって二人が誓ったことがある。トレジャーデータを日本のソフトウェアエンジニアが世界に羽ばたくための舞台にすることだ。

「日本のオープンソース中心のエンジニアは優秀な人が多い。それなのに外に出る機会が少なく、デフレで給料も高くない。僕らは日本にも拠点を置きましたが、エンジニアにシリコンバレー並みの待遇を提供するために、会社をエンジニアリングのスキルとグローバルのマーケットをつなぐプラットフォームにもしたかった」(芳川)

今回のM&Aで、二人の誓いの一部は叶えられた。トレジャーデータの従業員は全員、ストックオプションで株を持っている。従業員全体の持ち分は、創業者3人と同程度。早い段階で参画したメンバーを中心に、社員たちはM&Aで金銭的にも成功した。

「僕たちはシリコンバレーで野茂英雄になりたかった。野茂に続く、日本人メジャーリーガーが次々と生まれていったように、今回金銭的にもキャリア的にも報われた当社社員たちや、刺激を受けた人たちが、日本やシリコンバレーで新しいことを始めてくれたらうれしいですね」(芳川)。

文=村上 敬 写真=クレイグ・リー

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