ビジネス

2019.01.01

「肉眼では見えない」新たなビジネスを生む切削加工技術

ORIGAMI



(左)入曽精密代表取締役 斎藤清和(右)微細切削加工研究所執行役員 内田研一

17年11月、同社はMCの世界に革命をもたらす画期的な機器を開発した。MCに後付けすることで、従来は不可能だった高精度部品の全方位切削加工を自動化する装置“ORIGAMI”だ。
 
MCはコンピューターによる数値制御で加工を行うため、手作業による誤差は生じない。しかし、従来の超微細加工品の製作には壁があったという。

「金型製造は裏側の加工が必要ないため、加工の一元化は容易です。しかし、部品を製造する場合は全方位での加工が必要になります。従来は部品を人の手でセットし直すため誤差が生じたんです。ORIGAMIは微細部品を自動で持ち替えるシステムのため、微細で高品質な製品を量産できます」
 
今後はどのような展開が考えられるのか。「新しい技術が生まれれば、新しいビジネスが生まれます。東京電機大学と蝶形のドローンを共同製作できたのも、直径4mmのモーターにトルクを出すギアボックスやユニバーサルジョイントをORIGAMIで製作できたからです。今後はマイクロファイバーや胃カメラも小型化され、低侵襲医療の可能性が広がるでしょう。血管の中に入れる極小ロボットもできるかもしれません」
 
入曽精密の100%子会社である微細切削加工研究所の内田研一執行役員が斎藤の話を引き取る。

「微細加工技術を担う製造会社の大半を零細・中小企業が占めています。従来は大手企業から図面を受け取って製造する受託産業が中心でしたが、それだけでは生き残れません。そこで微細加工領域の技術に強みを持つ企業を中心に『微細加工工業会』というコンソーシアムをつくりました。製造業以外の人は、『製造業がどこまでできるか』を意外と知りません。そこをマッチングして新たな産業を生み出したい。今後は各会員企業の強みを生かし、世界規模で市場を広げたいですね」
 
まさに“スモール・ジャイアンツ”の力を最大化しようという試み。新たな挑戦に期待が高まる。

文=畠山理仁 写真=藤井さおり

この記事は 「Forbes JAPAN 日本の起業家」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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