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田坂広志の「深き思索、静かな気づき」

2009年11月、ダライ・ラマ法王と五人の科学者の対話の場に招かれた。

それは「科学と宗教の対話」をテーマに掲げた場であったが、数千人の聴衆を前に、一人の科学者として筆者が語ったのは、「21世紀、科学こそが、我々の心の中に、最も深い宗教的情操を育んでいく」という予見であった。

こう述べると、読者の中には、「科学と宗教は、本来、対極にあるものではないか」との疑問を抱く方もいるだろう。

しかし、真の宗教的情操とは、「神が存在するか否か」という素朴な問いからではなく、我々が生きるこの世界が、このような姿で存在することへの根源的な不思議さから生まれてくるものであろう。

されば、現代の最先端科学が解き明かしつつある、この世界の起源こそが、その不思議さを呼び起こすものに他ならない。

例えば、現代科学の最先端宇宙論が解き明かしつつある、この宇宙の起源。

それは、文字通り、不思議と驚異に満ちたものであろう。

この宇宙が誕生したのは、138億年前。

では、その前には、何が有ったのか。

何も無かった。

そこには、ただ、「量子真空」(QuantumVacuum)と呼ばれるものが存在した。

その量子真空が、突如、ゆらぎを生じ、急激な膨張を遂げた。それが「インフレーション宇宙」と呼ばれるもの。さらに、その直後、大爆発が生じ、この宇宙が誕生した。それが「ビッグバン宇宙」と呼ばれるものである。

そして、このビッグバンによって誕生した宇宙は、当初「光」(光子:フォトン)で満たされた。それが徐々に冷え、最初に、最も軽い元素である水素が形成された。次いで、その水素が互いに重力で引き合って集まり、何億年もかけて生まれたのが、夜空に輝く無数の星々、恒星であり、その一つ、太陽の周りに生まれた惑星が、この地球に他ならない。

これが、現代科学が明らかにしつつある宇宙誕生のプロセスである。

文=田坂広志

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