料理と日本酒のペアリングを楽しむ「お燗」という調理法

松茸リゾットとお燗のペアリング


ワインでは楽しめない「お燗」

千葉さんによると、ペアリングには大きく分けて「ピタピタ系」と「ウオッシュ系」がある。

たとえば「ピタピタ系」は、冷たいままで飲むと桃やヨーグルトのようなフルーティーで酸味のあるお燗した日本酒と、柿とマスカットの白和えのペアリング。「お酒はお燗にすると輪郭がはっきりして、“ぐいっと引っかかる”」と千葉さん。


フルーツの白和えとお燗のペアリング

白和えの柿を食べて燗酒を飲んでみると、甘酸っぱさのある後味が極めて似ている。マスカットは見事に同じ。クリーミーな豆腐の和え衣と日本酒のヨーグルト感も合う。たしかに、甘酸っぱさ、特に酸味が“フック”となって、酒と料理が絶妙にマッチする。たしかに日本酒の味と料理の味が「ピタピタ」と寄り添っている。季節に応じて、イチジクや桃など、フルーツを変えても楽しめるという。

「ウオッシュ系」では、冷たいままで飲むと樽酒のような香りがするお燗した日本酒と、舞茸と春菊のかき揚げ。お燗をつけてもらうと、味がぎゅっと凝縮される。

千葉さんによると、「お燗につけると、木のようなニュアンスが枯れた味になって揚げ物と合う」という。サクサクのかき揚げを頬張った後に、熱々の燗酒をぐいっと飲むと、すっと油を切って「ウオッシュ」してくれる。しかしながら、すべてを消してしまうのではなく、舞茸と春菊の風味が鼻の奥にふわーっと戻ってくる。


春菊と舞茸のかき揚げとお燗のペアリング

こうしたお燗が楽しめるのは、日本酒ならでは。千葉さんによると、ワインはアミノ酸がほとんど含まれていないため、温めると酸が際立ってしまうのだという。だからこそ、ホットワインにはフルーツや砂糖やシナモンを入れて楽しまれているのだ。

日本酒にフルーツを入れた「日本酒サングリア」なるものを見かけることがあるが、たとえば風味付けを目的に桃を入れた日本酒カクテルは「日本酒だけで桃のニュアンスを出すことができるのだから桃を入れる必要がない」(千葉さん)ということになる。

「冷酒で味わいを変える方法はグラスを変えるくらいしかありませんが、お燗は『もっと酸を上げたい』とかチューニングができます」と千葉さん。燗酒というとどこか“おやじっぽい”と感じる人もいるかもしれないが、お燗は温度帯の変化によって日本酒の楽しみの幅をぐんと広げてくれる魅力的な“調理法”なのだ。

連載 : 台湾と日本のお米事情
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文=柏木智帆

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