投資マネーから見た世の中

カルロス・ゴーン(2017年撮影、Getty Images)

「カリスマの対価」はどれくらいが正解なのだろう。

昨年12月21日、東京地検特捜部は、ゴーン容疑者が私的な為替取引の損失を会社に付け替えたなどとして背任容疑での再逮捕に踏み切った。しかしゴーン容疑者側は役員報酬の過少申告(金商法違反)容疑と同様に、違法性はなかったと主張。検察との全面対決姿勢のまま、年を越した。

この事件の根元には、日本と欧米とのCEO(最高経営責任者)の報酬の違いや、報酬を巡る企業ガバナンスの問題が横たわる。

ゴーン容疑者が、実際には他のグローバル企業トップらと横並びの報酬を要求しながら、日本で「もらいすぎ」と批判されるのを恐れて、有価証券取引書に報告する報酬額を10億円以下に抑えていたことが、過少記載の背景にあるからだ。

日産・ルノーグループは2017年に世界で1060万台以上の車を販売し、フォルクスワーゲンの1074万台に次ぐ世界第2位の座を獲得した。一方、この間ゼネラルモーターズ (GM)は販売台数が減少して4位に転落したが、そのGMのメアリー・バーラCEOは2017年、2200万ドル(約25億円)の報酬を受け取っている。


GMのメアリー・バーラCEO(getty images)

また販売台数世界6位のフォードのジム・ハケットCEOでさえ、それまで自動車会社の経営をしたことがない就任一年目の新社長であるにも関わらず、1670万ドル(約20億円)を手にしているのだ。

これらの競合メーカーと比較するなら、ゴーン容疑者が報告書に記載された10億円では「少なすぎる」と感じたとしても不思議ではない。

こうしたことを受けて日本のメディアの中には、ゴーン容疑者の報酬は高すぎはしない、むしろこれを機にグローバル比較で「過少」となっている日本の社長報酬の方を見直すべきだという論調まで散見される。

しかし、ちょっと待った。その前に、グローバル企業、特に米国企業CEOの行き過ぎた報酬については、当の欧米でも企業ガバナンスや社会的格差の観点から大きな批判が起きていることに、もっと注意を払うべきではないだろうか。

トップ報酬の上昇スパイラルが止まらない理由

グローバル企業のCEOの報酬は、過去40年程度、右肩上がりの上昇を続けてきた。

米国の経済政策研究所(EPI)の統計データでは、1970年代までは典型的なCEOの年間報酬は100万ドル以下で、従業員の平均年収との「社内格差」は30倍程度と、今ほどひどくなかった。

しかし世界的な金融自由化が始まる70年代終わり頃から、これが様変わりする。EPIが350の米国企業を対象に行った最新の調査では、2017年のCEO報酬は前年度より18%近くも伸びて、従業員平均との格差は312倍に拡大している。

文=小出フィッシャー美奈

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