旅から学ぶインバウンドの最前線


観光=カンタンにできるという勘違い

青木:国をあげてインバウンドに注力しているという前提を差し引いても、昔から観光地になりたいと施策を打つ傾向ってありますよね。どうして第一次産業や第二次産業ではなく、観光業に走りたがるのでしょう?

高井:観光=“人を呼んで、見てもらえればそれで成立するもの”、”カンタンにできるもの”といったイメージがあるのかもしれません。そこには、観光=トラッキングがしにくいからという特性があって、誤解を恐れずに言うと自治体にとっては「失敗を問われづらい」からではないでしょうか。

製造業であれば、商品を作るのにどれだけのコストがかかって、どれくらい売れて、リピートやシェアがどれくらいでときちんとデータをとって改善するサイクルが当たり前のものとして存在していますよね。張り切って観光地を作ったとして、来てくれた人が何に喜んでくれて、何に不満で、どこを変えたらいいのかといったデータをとって、PDCAをまわせている自治体がどれくらいあるかと言われたら、ほとんどないんじゃないですか?

青木:今のように市場がオープンになる前は、旅行会社が人をどんどん引っ張ってきてくれて、そこにアイデアや労力をかけてこなかったこととも関係していそうですね。

高井:ひと言で言えば、送客してくれる旅行会社に過依存してしまった地域や宿泊施設は思考停止していたんですよね。今、Peer to Peerの時代になってきて、満足度というものが本当に必要になってくる。これから今まで手付かずだったところに手が入るようになるだろうし、きっと日本の観光業はうまくいきはじめると思うんですよ。

青木:すぐに結果が出ないのは大前提としても。とにかくこれだけオープンになってきているので、比較したときに「なぜこれを選ぶのか」という理由があるといいと思います。

高井:真剣に村おこし、町おこしをしようと思ったら、マーケットを研究して、自分たちの経営資源を磨き上げ、そこを擦り合わせながら売れるものを作るはずですよね。これ製造業だと当たり前のことじゃないですか。新しい商品を作ることって、そんなに急に、簡単にできることではないので。さっきもお話しましたが、それが観光となった途端にすぐにできるんじゃないかという勘違いが生まれる。

青木さんの記事を読んだり、今日こうしてお話をして、私が最近の「体験型観光」という動きに多少の違和感を覚えていたのは、それが点の体験であり、消費としての体験に重心が置かれているからだったんだなとわかりました。

青木:ありがとうございます。

高井:ビジネスとして観光を語るなら、もちろん消費が重要なのですが、そこにしがみつきすぎると、旅という行為の持つ広がりと深みから離れていってしまいます。目先のビジネスとして小さくまとまるのではなく、地域とそこに住む人びとが外に向かって開きながら持続していくような、観光が持つ可能性を最大限に発揮できるような観光ビジネスを考えていきたいですね。

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構成=梶山ひろみ

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