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川村雄介の飛耳長目

波打ち際では10センチにも満たない黒い生き物が、三々五々、海に向かってよちよちと歩を進めている。ウミガメの赤ちゃんたちだ。灼熱の太陽が傾き始めたインドネシアのバリ島である。密猟や環境汚染のせいで、めっきり数を減らしたウミガメを保育しようと、卵の孵化から放流まで手掛けるセンターがこのバリ島にはある。

折から開催されたアジア証券人フォーラム(ASF)のアトラクションの一つとして、私もウミガメ放流という珍しい経験をさせてもらうことができた。

ASFは25年ほど前、日本証券業協会の提唱によって発足した、アジアオセアニア地域の証券業者による国際会議である。参加国・関係機関数は23に達している。年番で主催国を回しており、今年はインドネシアという次第。毎年1回は関係者が一堂に会して総会を開く。

今年は、フィンテックや証券市場規制の共通化などが活発に話し合われたが、何と言ってもハイライトはSDGsであった。

SDGsは2015年の国連総会で採択された、2030年までに実現すべき全世界の「持続可能な開発目標」である。人類を取り巻く自然環境、社会環境の17のテーマの飛躍的向上を目指すものだ。日本政府はいち早く対応に乗り出したが、民間が本格的な関心を持ち始めたのは昨年あたりからである。

昨今では多くの企業が取り組み始め、街中では、上着にテーマの17色をデザインしたSDGsバッジを付けたビジネスパーソンを見掛けることも多くなった。

SDGsにことのほか熱心なのが証券業界である。大和証券グループは経営理念にSDGsの実現を掲げ、全役職員に件のバッジ着用を義務付けている。

日本証券業協会も本気である。鈴木茂晴協会長は早くから問題意識を持ち、昨年から協会の方針にSDGsの推進を盛り込んだ。個社としての取り組みは珍しくないが、業界団体として積極的にSDGsを前面に押し出すのは、世界的にも恐らく日証協が初めてのケースだろう。

証券市場においては、かねてよりグリーンボンドやインパクト・インベストメントと呼ばれる、環境や健康に配慮した事業への資金調達をサポートするファイナンスが手掛けられていた。また、投資に当たっては、SDGsの実現に資する会社であるかどうかを重要な判断基準とする、ESG(Environment, Social, Governance)投資が主流になっている。

日証協はこれに留まらず、より幅広い検討を加えるために、業界を挙げてSDGsの実現を目指している。協会長を委員長とするSDGs懇談会を設置して、より具体的な対応策を打ち出そうとしている。事務局にSDGs室を設けた業界団体も日証協を嚆矢とする。

文=川村雄介

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