「アパルトヘイトは過去の物語か?」マンデラ5回忌に南ア女性作家が投げた問い

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ

「歴史と記憶の話をするとき……ネルソン・マンデラを思い出すのは簡単です。なぜなら、彼はほかならぬネルソン・マンデラだから。でも一体誰が、この人物の物語の価値はほかの誰かの物語の価値よりも重い、と決めるのでしょう?」

これは、ネルソン・マンデラ没後5年を記念して行われた「ネルソン・マンデラ・トリビュート」でのパネルディスカッションで、ファシリテーターのキャシー・モーラーラナが投げかけた質問だ。

2018年12月12日、南アフリカ・ヨハネスブルクのUNISAオーモンド校で、ネルソン・マンデラ財団主催のもとに開かれたイベントでのことである。

基調講演は、ナイジェリア出身の著名な作家でありフェミニストとしても知られるチママンダ・ンゴズィ・アディーチェが行った。


Soweto Gospel Choir at the Nelson Mandela Tribute on December 12, 2018. Picture: Karen Mwendera

アディーチェの講演の前には、ソウェト・ゴスペル合唱団による「ティナ・シズウェ」や「リザリセ・イディンガ・ラクホ」のほか、南アフリカのポップ・クイーン、ブレンダ・ファッシーによるヒット曲「Vuperformancela」の披露など、すばらしいパフォーマンスが聴衆を魅了した。

合唱団は反アパルトヘイト活動家たちへの敬意として最後に、ピーター・ガブリエルの歌「ビコ」で演奏を締めくくった。この歌はバントゥーー族の反アパルトヘイト活動家、スティーブン・ビコの名をタイトルに冠したものだ。ビコは「黒人意識運動」の最前線で闘い、1977年に留置場で力尽きた活動家である。

ネルソン・マンデラ財団最高責任者のセロ・ハタン氏はスピーチで、パン・アフリカ主義解放運動の英雄ロバート・マンガリソ・ソブクウェに言及し、「われわれの歴史の中でも突出して偉大な一人で、アパルトヘイト政権が記憶から消し去ろうと試みた人物」だったと述べた。


Nelson Mandela Foundation chief executive Sello Hatang at the Nelson Mandela Tribute on December 12, 2018. Picture: Karen Mwendera

南アフリカの解放運動において女性が果たした役割について、ハタンはこのように語る。

「われわれはまた、今年が(反アパルトヘイト活動のリーダー、『マザー・オブ・ネーション』とも称された)マダム・アルベルティナ・シスル生誕百年の年であることも思い出すべきだ。また、女性たちの物語や価値は家父長制度によって歪められ矮小化されたが、今年がそういった「女性たちの年」であることも重要だ。そして、今年は(故マンデラ元大統領の前妻)ママ・ウィニー・マディキゼラ・マンデラを葬った年であることも忘れてはならない」

会場には、故ネルソン・マンデラ元大統領の未亡人で活動家のグラサ・マシェルもいて、アディーチェの、「記憶、そして大衆の想像力が持つ力」についての講演に一心に耳を傾けていた。
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翻訳=松本裕/株式会社トランネット 編集=石井節子 写真=Forbes AFRICA提供

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