ケリー被告保釈、夫人の嘆願で広がるアメリカでの日本検察への非難

カルロス・ゴーン(Photo by Christophe Morin/IP3/Getty Images)


日本のバンブーガーデンを破った男

そこへきて、今回、手術が必要な人間を長期勾留しているということがアメリカのメディアに報道されたのは、世界第3位の経済大国で、かつ民主主義、国家の法治、人権への配慮と、どれをとってもアジアでダントツ、世界レベルでも超先進国の日本のイメージを棄損している。

身体上の障害や病気にはとてもセンシティブなアメリカでは、本件は拷問と考えられても不思議ではない。しかも、本人が希望しているのに、取り調べに弁護士を同席させないというのは、かなり前時代的に見える。

アメリカの視点でみれば、前科のない経済犯で、地域で敬意を得て、コミュニティに根差している人であれば、フライトリスク(海外逃亡)の恐れさえなければ保釈金を積んで保釈するのがスタンダードだ。フライトリスクがあれば、パスポートを裁判所で預かるというのもごく普通に行われている。

日本流がまずいと言われているのではない。おそらく、この、「常識人が納得する理由を与えない」態度に、アメリカのメディアは怒っている。

理由のない長期勾留、理由のない接見禁止、理由のない弁護人の同席拒否。それをルールだからと、国会議員の鈴木宗男氏にもこのようにしたのだというのが通じるのは、日本人だけだ。G7に参加する唯一のアジアの国に求められているのは、日本流でいいから、理由を説明をせよということだと感得する。

ゴーン容疑者とケリー容疑者の逮捕後、11月27日に、WSJは編集主幹の社説で、これをアンフェアと、強く抵抗している。とくに、日本の報道機関だけにリークがされて、逮捕瞬間の羽田空港に日本のメディアだけは揃っていたことを、強い皮肉で避難している。

さらにWSJは、「Japan has always had an insular corporate culture, and Mr. Ghosn was a rare foreign executive to break that bamboo curtain.」(原文ママ)と書き、「日本はいつも島国根性の企業文化を持っているが、ゴーン氏こそはそのバンブー(竹林)カーテンを破った数少ない外国人経営者だった」(筆者訳)と、「説明が与えられない」ことを島国根性と比喩して弾劾している。

バンブーカーテンというのは明らかに差別用語だ。日本文化から「竹」をとったつもりだろうが、ウィキペディアによれば、冷戦時代の、東南アジアの資本主義国家と共産主義国家の国境という意味がある。日本はそこまで閉鎖的に映るのか? 筆者の22年の在米期間で、わが国に対してこのような差別用語をメディアに使われたことは寡聞にして知らない。筆者はWSJに抗議文を送ったが、当然ながら無視されている。

連載 : ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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