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2018.12.26

米国の辞書サイトが今年の言葉に「Misinformation(虚報)」を選定

Georgejmclittle / shutterstock


この風潮も受け、アップル、ツイッター、ユーチューブ、フェイスブック、スポティファイといった主要コンテンツプラットフォーム各社が、暴力的な情報を繰り返し流布したなどの理由で、陰謀論者アレックス・ジョーンズを排除した。さらにツイッターは、数百万の「ボット」アカウントをMisinformationを流布している理由で凍結した。

またマーク・ザッカーバーグは4月、米連邦議会で、フェイスブック上のMisinformationの拡散についての質問に次のように答弁している。

「人々に声を与えるだけでは十分ではありません。われわれは、人々がそれらの声で他者を傷つけない、Misinformationを拡散しないようにと注意しなければなりません。フェイスブック経営陣には、ツールを作るにとどまらず、人々がそのツールを良いことに使うように留意する責任があります」

Misinformationの拡散に「加担」しないためには?

2016年、熊本地震の直後に「動物園からライオンが逃げた」という嘘の投稿がツイッターで2万回以上リツイートされる、という「事件」があったことは記憶に新しい。熊本市動植物園にはこの日から翌日にかけて、「本当にライオンは脱走したのか」という問い合わせ電話が100本以上がかかってき たという。

虚偽情報をこんな風にリツイートなどで拡散しないためにはどうすればよいか? 「Misinformation」に惑わされないためには? この点については、社会心理学者ハードレイ・キャントリルの研究がよく引用される。それは、情報そのものの真実性を常識や持ち合わせた知識で評価してみる「内在的チェック」と、オリジナルの情報元以外の、複数の情報源で確かめてみる「外在的チェック」が有効、というものだ。

産婦人科師のジェン・ガンター氏は、前出のグウィネス・パルトローのライフスタイルサイト「Goop」について、「記事の内容はほぼ全てが間違っており、潜在的な危険性がある」などと、自身のブログで徹底的に批判したことで知られる。

このガンター医師がDictionary.comのサイトで次のように語っている。

「専門知識を持った人たちが自分はエキスパートだと手を上げ、情報を積極的に評価することがより重要になります」

「そうやって情報に『真実の証明』(あるいは『虚報の目印』)をつけることが、一般の人たちにとっての判断の基準になるのです」

確かに、専門家が情報につける「印」は、「外在的チェック」の拠り所になり得る。混沌の中の真実に目を凝らすためのスキルにもなるだろう。さらにそれらの「印」を目にした体験の蓄積が、やがてはわれわれ自身にとっての内在的チェックの評価軸になっていく可能性もある。

Dictionary.comのサイト上では、カリフォルニア大学バークレー校・ジャーナリズム大学院ディーンのエド・ワッサーマン教授が「後になって今を思い返すときおそらく、『あの時が始まりだった』と思い返すだろう」と話していて印象的だが、未来の人々には今をせめて、専門家の警告意識が高まり、受信者自身のチェック機能が健全に機能し始めた時代としても振り返ってほしいものだ。

なお、Oxford Dictiononariesが選んだ今年の言葉は「toxic(毒々しい)」、Collins Dictiononaryが「single-use(使い捨ての)」。2017年にDictionary.comが今年の言葉として選んだのは「complicit」(共犯の、共謀した)、2016年は「Xenophobia」(外国人嫌悪)だった。

文=石井節子

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