Siriはスマートで劣る!? 競争激化のスマートアシスタント業界は今

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スマートフォン市場において1位、2位を争い合うアップルとサムスン。スマートアシスタント分野でも順風満帆と思いきや低調気味だ。

グーグルやアマゾン、マイクロソフトの多言語施策が着実に実を結ぶなか、サムスンはというと進んでおらず、対応言語は韓国語とアメリカ英語、中国語のみ。11月7〜8日の2日間にわたり開催された「Samsung Developer Conference 2018」では、今後の予定として、イギリス英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語の5言語を追加する方針を固めた。

アップルもまた自然言語処理分野ではグーグルやアマゾンに後れを取っている。コンサルティング会社Stone Templeが今年実施した調査では、アップルの「Siri」の能力が他社のスマートアシスタント(コルタナ搭載の「インヴォーク」、アマゾンのAIアシスタント「アレクサ」、グーグルアシスタント)に比べかなり劣ることが明らかとなった。

これら4社のスマートアシスタントのうち、最も高い正答率を打ち出したのはグーグルアシスタントであり、その後コルタナ、アレクサと続いた。アップルは3社から大きく引き離され、最下位であった。「Siri」はその他のスマートアシスタントに比べ、質問を理解し、完全な回答をする能力が著しく低いという。

認知意味論的枠組みから見ても、「Siri」には問題が山積みだ。

人間の言葉というのはAIに容易に解釈されるほど単純なものではない。言葉の成立には複数の概念が関わっており、我々人間は概念領域間の写像(メタファー)を通じて言葉を解釈している。つまり、メタファーこそが人間の認知活動の基本であり、世界を捉えるうえで重要な手段である。これは認知言語学者George Lakoffが自身の著書『Metaphors We Live by』で主張している根本的な考えである。

「Siri」をはじめ既存のスマートアシスタントのAIは統語上の単位である限られたレキシコン(語彙)で訓練されており、微妙なニュアンスを汲み取ることができない。

「grasp」を例に挙げると、物理的概念の「掴む」と、心理的概念の「理解する」の意味がある。現時点において、「Siri」は文脈で使用された「grasp」がどちらの意味を指すのかを判別可能なレベルには達していない。

アップルと言えば、自然言語処理分野を強化すべく、今年4月、同社のスマートアシスタント「Siri」の開発チームメンバーに元グーグル幹部を起用したと発表している。

スマートアシスタント業界はグーグルの独走状態から脱し、マイクロソフト、アマゾンが追い上げてきている。そこにアップルやサムスンが入り込み、競争がさらに激化することが予想されるだろう。

文=大澤法子

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