キャリア・教育

2018.12.24 11:00

名は体をつくる? 独断で選ぶ2018年ネーミング大賞

shutterstock.com

shutterstock.com

日々、新しい言葉の採集を意識して過ごす「ニューワードハンター」にとって、12月はまるで歳末棚卸し大放出のようだ。いっせいに1年間の新語を目にする機会となる。

もはや季節の風物誌として定着した「ユーキャン新語・流行語大賞」は、「そだねー」を年間大賞に選んだ。平昌オリンピック、カーリング女子日本代表チームの試合中の相槌で、紛れもなく北海道の方言。それを日本中の人たちがいっせいに口にして、文字にする現象が起きた。

それを受け、チームの地元、北見工大生活協同組合と道産の菓子メーカー六花亭が商標登録出願したことも、賛否を含め話題となった。両者とも善意での出願で、「そだねー」の悪用から守る目的とのこと。北見工大生協は、商標権から生まれる利益は、カーリングの振興に寄付するとも公表していた。

公共性の高い地名には、商標権を認めない特許庁の近年の方針のもと、同じくパブリックな方言に、商標性は認められるのかと疑問に思ったものだが、あらためて方言に注目が集まることは興味深い。過去にもカーナビの方言音声ガイドや、取説(取扱説明書)の方言動画が話題になったこともあったが、いま流行りの自動翻訳機やAIスピーカーは、方言に対応するのだろうか。

大賞の「そだねー」は、スポーツの感動を伴うストーリーに加え、誰もが思わず口にしたくなる音の響きや、テキストに打ち込みやすい字面が流行を生んだ。インターネットによりグローバルなレベルで情報の均質化が進むカウンターとして、今後とも必ず方言的なものは注目されるはずだ。

「ばえ文化」はどこまで続くのか

三省堂の「今年の新語2018」は、「ばえる(映える)」を大賞にした。こちらは言葉のプロが、選考では「辞書に単語や新たな用例が掲載される可能性」を加味して選ぶため、「そだねー」は選外となり、「インスタ映え」の「映え」が動詞化して、「ばえる」と一般化したことを評価したようだ。

「ばえる」か「ばえない」か、それが問題だ。そういう価値基準をつくったという意味で、言葉が世界観をつくるという、わたくしの考えとも一致して納得できたが、「ばえる」にたかる「インスタ蝿」という新たな言葉も生まれており、どこまで「ばえ文化」が続くか、社会に定着するかは、もう少し時間をおいて注目してみたいとも思う。ちなみに同賞の2位は「モヤる」、3位が「わかりみ」だった。

小学館の「大辞泉が選ぶ新語大賞2018」は、大賞を「空白恐怖症」とした。この連載でも取り上げたネーミングであり、スケジュールの空白を恐れるという意味の、おそらくスマホを手にしている人ならすべからく軽度に罹患している、今日的な強迫症なのだと思う。

次点は、結婚という形式は維持しながらも、夫婦が互いに干渉しない生き方を示す「卒婚」と、論点をすり替えた答弁のやり方を指す「ご飯論法」。2つの新語とも「卒」と「婚」、「ご飯」と「論法」という、「えっ、 何だろう?」と、知りたい欲をくすぐる違和感のある言葉の組み合わせに妙がある。
次ページ > 不協和音がインパクトを生む

文=田中宏和

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事