アキレス腱というか、弱点があるかというと、室内の質感と言えるだろう。
外観のデザイン、エンジンやハンドリングに予算を費やした分、室内のマテリアルには予算をかけていない。残念ながら、ダッシュボード周りのプラスティックはかなりチープなものを使っている。
でも、こういうハンドリング抜群のホットハッチを300万円ぐらいで出すなら、開発のどこかでケチる必要があるだろう。ちなみに、タイプRは400万円ぐらい。もう1台と比べてみても良い。
この前、全く新しい184psを発揮する2Lのマツダ・ロードスターに乗ってみた。素晴らしいクルマにはなっているけど、最低価格は336万円からということと、パワー的には90psほどの差を考えると、ヴェロスターNのとんでもないコストパフォーマンスがわかる。
躍進を支える二人のドイツ人
ここで、1つ確認しておきたい。なぜヒュンダイ(兄弟社のキアもそうだけど)のデザインやハンドリングが同時にこんなに短い間に、こんなに良くなっているのか。それは、10年ほど前に、元アウディのデザイン部長だったピーター・シュレイヤー氏がヒュンダイ・キアのデザインディレクターに就任して、ころっとデザインを変えたことが大きい。
今、そのシュレイヤー氏のデザインの方針が非常に高く評価され、彼の元でデザインされたジェネシスG70(ヒュンダイ・キア・グループの高級ブランド)がアメリカの有力誌「モーター・トレンド」のカー・オブ・ザ・イヤー賞を受賞するほどだ。
でも、ヒュンダイが高く評価されているのはデザインだけではない。性能もハンドリングも驚くほど向上している。そのカギを握るのも、実はもう一人のドイツ人のおかげだ。
3年ほど前に、元BMWのMパフォーマンス部門の開発部長だったアルバート・ビアマン氏が、ヒュンダイとキアの研究開発本部長に勤め始めた。今回乗ったヴェロスターNは、この新しい時代にふさわしい韓国・ドイツの合作の象徴的な存在といえる。
スポーツカーはフィーリングだよね。思い切り走って降りた時に、どれだけの快感があってどれぐらい大きな微笑みがあるか、それがそのスポーツカーの存在価値だ。
このヴェロスターNの水色の格好良いルックスと、溢れるパワー、無駄のないハンドリング、ファン・トゥ・ドライブ、そして抜群のコストパフォーマンス。 これは、日本車は大いに見習うべきではないか。
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