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フリーライター/エディター




ユーチューブがつくったのは、サービスではなく「コミュニティ」だ


藤井:グーグルからの買収を受け入れた理由を教えてください。自分たちの会社を売ることに、マイナスイメージはありませんでしたか?

ハーリー:売却を決意したのは、継続的な成長にはお金が必要だったからです。当時のグーグルはオンライン動画で広告を始めようとしていた。ユーチューブのサービスを原則無料にするつもりだった私たちにとって、グーグルのアド(広告)テクノロジーはぴったりだったんです。

もう一つ幸運だったのは、グーグルの考え方が私たちの企業文化と似ていたことです。私たちはとにかく効率よくインフラをつくるためにチームを少数にしており、買収時にもユーチューブのメンバーはたった67名でした。

グーグルはこの考え方を尊重して、私たちの独立性を維持してくれた。あれほどの大企業が好きにやらせてくれるというのは、本当に珍しいことだと思います。

もちろん上場したいという気持ちもありましたよ。いままでつくってきたものを売るのに、心が痛まないわけはありません。しかし、何より大切なのは、私たちがつくったのは「コミュニティ」だということです。

いまではユーチューブは、動画をアップするためのプロダクトから、人々が夢や才能を共有するコミュニティになりました。それは皆さんの文化や経験を、世界中に届けるということです。ユーチューブがなかった頃、ニュースのほとんどはテレビ番組から発信されていました。私たちはそれを変えたかったのです。

そして幸運なことに、経験を共有したいというニーズはあまりに大きく、コミュニティは急速に拡大しました。ですから、ユーザーに何らかの形で売り上げを還元したいと考えました。

そこで、2007年頃からはみなさん一人ひとりが自分自身でクリエイターになれるようサポートを開始しました。いまではその夢もかなり実現したのではないでしょうか。いま、ユーチューブを使って何億円ものお金を稼ぐ人が続々と現れています。



これからのユーチューブ、これからのインターネット

那珂:これからユーチューブは、どんなことに注力するつもりなのでしょうか?

ハーリー:グーグルが手伝ってくれているので、これ以上宣伝は必要ありません。大切なのは、ルーツに立ち返ることです。具体的には、質の高いコンテンツ作りのサポートですね。量よりも質です。いま世界中でコンテンツの量はすごいスピードで増えていますが、質の高いものの割合は減っています。

そのためにつくったのが、ユーチューブのスタジオです。ここにアクセスできない人たちに対しても、教育のツールを提供していきたい。もっと人々にストーリーボーディングなどを学んでほしいし、それぞれの家庭でコンテンツを作れるようになってほしいんです。

藤井:続いて、ユーチューブについて伺います。日本では特に若い世代が将来の仕事としてユーチューバーになりたいといっています。最近は、7歳のユーチューバーが約2500万ドル稼いでいるというニュースも話題になりました。それについてどう思いますか。

ハーリー:サービスを始めた時には、こんなことになるとは全く想像していませんでしたね。大成功でした。

いまでは若い人は、テレビで芸能人を見る代わりにユーチューバーを見ている。彼らは自分に似ている人、なんらかの関係を感じられる人を見ているんです。自分に近い存在がユーチューバーになり、みんなを楽しませてくれる。だから自分もそれになりたくなる。それがつながっていまたくさんの啓発を起こしているんです。

もちろんコンテンツが増えていけば、いまと同じような共感を得るとは限りません。ですが、より色んなコンテンツが色んな人を捉えるようにのではないでしょうか。新しいコンテンツを、新しい世代が消費をする。これはテレビ番組や映画では成せないことだと思います。

那珂:ほかにネットサービスの未来について、考えていることはありますか?

ハーリー:フェイスブックがVRのオキュラスを買収しましたが、これはもしかしたら時期尚早だったかもしれませんね。30年くらい前から「次はバーチャルリアリティ(VR)がくる!」といわれていますが、私はまだだと思っています。むしろ「オーグメンテッドリアリティ(AR)」が有望だと思っています。

人々はたくさんの情報を消費したいという欲求がありますが、そのためにはいつもスマートフォンを見ていなければならず、依存性になってしまいます。一方、VRをいつも使っていると周辺のものと切り離されてしまうし、同じ室内にいる人と経験を共有できないという欠点があります。

これからはゴーグルやメガネといった身につけられるARデバイスで、データを消費できるようになるのではないでしょうか。加えて、インタラクティブなデバイスが現れるかもしれません。例えば、バーチャルペットとかね。

編集・構成=野口直希 撮影=嶺竜一

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