日産は、1980年代のバブル景気時代には高い技術力を生かして、人気高級車種をヒットさせていたが、90年代のバブル崩壊で高級車の販売が低迷、強い組合運動の影響でコストカットがうまくいかず、98年には、有利子負債2兆円を抱えて、綻寸前に陥っていた。99年3月に、ルノーが6430億円を出資し、日産自動車の株式36.8%、および日産ディーゼル工業の株式15.2%を取得した。
さらに、ルノーの副社長であったゴーン氏を最高執行責任者(COO)(のちに最高経営責任〈CEO〉)として送り込んだ。生産拠点工場の閉鎖、早期退職制度による人員削減、子会社の統廃合、不採算事業や遊休資産の売却などを進めて、03年6月には銀行からの借入金を全部返済した。国内シェアも、12%前後から20%近くまで回復させた。ゴーン氏はコストカットを中心として、日産をV字回復させた立役者としての地位を確立した。
ただし、あまり知られていないが、フランスはこの99年まで、日本車に対して事実上の輸入台数規制を行っていた。日本車輸入制限で利益を受けていたルノーに日産の救済をお願いするというのも、日本はきわめて「お人好し」だったといえる。
現在の資本関係は次のとおりである。①フランス政府のルノーに対する出資比率は15.01%で筆頭株主。議決権あり。②ルノーによる日産の株式保有比率は、43%で議決権あり。③日産のルノーに対する株式保有比率は15%だが、議決権がない。これはフランスの会社法で、40%以上保有している会社の持ち分には議決権がないという規定による。
基本的に、フランス政府はルノーに大きな影響力をもち、ルノーは事実上日産を支配している。フランス政府は、15年以降、ルノーへの影響力の拡大と日産との関係強化(たとえばルノー主導による経営統合)を画策してきた。この時点では、ゴーン会長はルノー・日産を代表して、フランス政府の影響力拡大に反対した。その結果、フランス政府とルノー・日産連合は、15年末に妥協の合意を結んだ。ルノーが日産の株式を買い増す場合は、日産の同意を得なくてはならない。