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2018.12.31 11:00

オープンイノベーションのトップランナー3社が語る「進化への道」

「Global Brain Alliance Forum 2018」でのパネルディスカッションの様子

「Global Brain Alliance Forum 2018」でのパネルディスカッションの様子

グローバル・ブレインは2018年12月、グローバルベンチャーと大企業のミートアップイベント「Global Brain Alliance Forum 2018」を開催した。大企業の経営企画及び新規事業担当者、スタートアップ経営者、海外スタートアップ経営者など、約600名が来場。 同イベントにて、オープンイノベーション推進に積極的な大企業を集めたCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ラボ「α TRACKERS(アルファトラッカーズ)」の設立を発表した。

当日は、参画企業16社から代表して、KDDI、三井不動産、ANAホールディングスらによるパネルディスカッション「next CVC CVCの理想と現実。コーポレートベンチャリング/オープンイノベーションのあるべき姿とは?」が行われた。

登壇したのはKDDIライフデザイン事業本部ライフデザイン事業企画本部ビジネスインキュベーション推進部の中馬和彦部長、三井不動産ベンチャー共創事業部の菅原晶部長、ANAホールディングスデジタル・デザイン・ラボの津田佳明チーフ・ディレクター、グローバル・ブレインの百合本安彦社長、Forbes JAPAN編集長、高野真の5人。


KDDIは11年から国内事業会社で初めてとなるインキュベーションプログラム「KDDIムゲンLabo」を開始し、シード・アーリーステージのスタートアップ支援をはじめた。翌12年からCVCの「KDDI Open Innovation Fund 1号」(50億円)をグローバル・ブレインと共同で組成し、アーリー・ミドルステージのスタートアップへの資金的な支援もはじめた。

直近では18年4月に同ファンド3号(200億円)も組成した。現在まで、「KDDIムゲンLabo」では66社採択し、「KDDI Open Innovation Fund」では51社に出資、M&A(合併・買収)を4社行った。

「エコシステムという観点では、『KDDIムゲンLabo』は4年前から事業共創型プログラムを開始している。KDDI 1社だけでなく、大企業36社にも加わっていただき、一緒にスタートアップを支援している。パートナーと共に支援することにより、通信会社だけではできなかった、不動産テックや教育などリアルビジネスへの幅広い支援ができている」(中馬和彦部長)

三井不動産は15年4月、ベンチャー共創事業部を立ち上げ、「コミュニティ」「資金」「支援」によるベンチャー共創事業「31 VENTURES」を運営。15年12月には、CVC「31 VENTURES グローバルイノベーションファンド 1号」(50億円)をグローバル・ブレインと共同で設立した。

スタートアップに対してコミュニティや施設を提供し、事業面でのサポート、実証実験、マーケティング、ビジネスモデルの構築まで支援している。18年5月には、グローバル・ブレインと組み、300億円の投資事業を開始した。

また、三井不動産は18年3月、大企業とスタートアップが連携するための拠点「BASE Q(ベース・キュー)」を設立。同社とともにEY JAPANと電通も運営に関わり、大企業の中でイノベーションや新規事業創出を行う企業内起業家とスタートアップのマッチングの場、コミュニティづくり、イノベーション・ビルディングプログラムを行ない、大手企業のイノベーション創出を支援している。

「スタートアップと大企業をつなぎ、日本の新産業創出を実現する。我々としては、イノベーションを取り組むだけではなく、必ず実現する。そんなオープンイノベーションを目指していきたい」(菅原晶部長)

ANAホールディングスは16年4月、破壊的イノベーションを起こすための新組織「デジタル・デザイン・ラボ」を立ち上げた。客室乗務員や空港スタッフ、JAXAからの出向社員もいるなど多様なメンバー13人が所属している。同社は、最先端技術の開発コンテストを主宰する米Xプライズ財団と提携し、「ANA AVATAR XPRIZE」という国際的な賞金レースを開催するなど「アバター」事業をはじめ、有人宇宙飛行領域では宇宙飛行機開発の「PDエアロスペース」にも直接出資を行なった。

それ以外にも、「赤ちゃんが泣かないヒコーキ」、「乗ると元気になるヒコーキ」といったユニークなプロジェクトも進めている。

直近では、「空飛ぶクルマ」官民協議会への参画、玄海島での実証実験などドローン物流実用化推進調査、訪日客と日本人ガイドとのマッチングサービスを手掛けるハバーとの業務資本提携、宇宙開発におけるアバターの利用に向けJAXA・大分県との共同実験を発表している。

「ANAは創業時、ヘリコプター2機、社員16人のまさにスタートアップ。様々なチャレンジを繰り返して、旅客機300機、社員4万2000人の会社まで成長してきた。一つひとつのチャレンジで成長してきた。それを今、出島の組織を作って取り組んでいます」(津田佳明チーフ・ディレクター)

Forbes JAPANでは今後、「α TRACKERS」参画企業16社のオープンイノベーションの取り組みについて、「目的・狙い」「特色」「成長に向けた課題認識」「今後」という観点で取材をし、本誌誌面にて記事化していく。

文=山本智之 写真=セドリック・ディラドリアン

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