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クリエイティブなライフスタイルの「種」


──現代建築における東南アジア的な感性の表現とは、具体的にどのようなものですか?

近代や現代の建築というのは、ヨーロッパを中心に発展してきた歴史や文化なので、東南アジアにはどうしても、西欧中心に対しての周縁、つまりオリエンタルな要素を求められがちです。ローテクノロジーで、ローマテリアルで、グリーンアーキテクチャーあたりが定説で。東南アジアならではの知性は、あまり期待されていないのが実情です。

でも、たとえばベトナムであれば、この地で育まれてきた知恵や文化、気候風土に合った知性があるはずで、それを丁寧に見つけ出して、形にしていけたら面白いのでは、と。形を伴って人々の生活に寄り添えることが、なにより建築の強みだと思うので。


「チャウドックの家」は、TASCHENの新刊「Homes of Our Time」でも取り上げられた。「特に地方では、外部からの評価が人々の自信に繋がる場合もある」と西澤氏。右側の写真は、施主が元々暮らしていた高床式住居。

──西澤さんが東南アジア的な感性を表現した建築を紹介してもらえますか。

ベトナムのアンザン省に「チャウドックの家」という住宅を作りました。この地域はメコン川沿いにあり、長年洪水に悩まされながら暮らしてきた背景があります。そのため、ほとんどの家が高床式住居か水上住居で、夜行バスと渡し舟を乗り継ぎ、7時間ほどかけてやっと到着するようなところです。

水上独特の生活風景があり、建築家でなくてもワクワクするような街並みなのですが、大半の住民が自分の家をみっともないものだと思っているんです。「もうこんな家はイヤだ、人に見せるのも恥ずかしい……」と。

実際、ホーチミンのような都会的な家を作って欲しいというのが、施主からの要望でした。つまりアイデンティティを失った便利な箱、ジェネリック・スタイルが、豊かさの象徴として捉えられていたんです。

そこで私たちは、この地域には長い間、水と上手に共生してきた美しい知性があることや、受け継いできた生活様式を現代の生活に適合するように編集し直せば、十分に豊かな住まいが出来ることを、粘り強く説得し続けました。

そしていざ出来上がってみると、施主も地域の人たちももの凄く喜んでくれて、「ベトナムの日常の生活美を再発見してくれて有り難う」といった内容のお手紙をいくつも頂きました。少しずつですが、地元の人々の「豊かさ」に対する考え方も変わりつつあります。


「熱帯の光と影」をテーマにした「Restaurant of Shade (Pizza 4P’s Hai Ba Trung)」。南国の太陽光の威力は想像以上に大きく、雨や風のように物理的に知覚される存在。身近な日常生活やその美しさの中に建築のテーマを見つけ出す姿勢は、西澤氏のプロジェクトに共通する要素だ。(Restaurant of Shade:新建築2019年1月号)

文=国府田淳 写真=大木宏行

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