キーフォブやデジタル温度計、リモコン、時計、カメラ、小型の電子玩具などに広く使用されているこれらの電池は、乳児や幼児にとっては特に魅力的なものだ。そのくらいの子供たちは、光ってきれいなこうしたものを、どうにかして耳や鼻に入れてしまったり、ひどい場合には飲み込んでしまったりする。
米国では、ボタン電池が原因で病院の救急処置室を訪れる人の数は毎年、3500人を超える。幼児向けの玩具にこうした小型電池が使われるケースがますます増え、病院に運び込まれる子供の数も年々増加していることから、米国小児科学会はボタン電池の誤飲防止に向けた戦略の立案と調整、実行のための特別委員会を設置している。
数時間で人体に影響
ボタン電池を誤って飲んでしまった場合、特に小型の電池を誤飲した場合には、数時間、または数日間、気付かないこともある。だが、5セントや25セント硬貨ほどの大きさがある3ボルトの電池なら、2時間以内に組織に害を及ぼし始める可能性がある。
ボタン電池を誤って飲み込むと、食道のただれ(びらん)や気管(のど笛)の損傷などが起きるほか、胸部の大血管が影響を受けることがある。臓器が治療不可能な損傷を受け、死に至ることもある。
さらに、子供は硬貨を飲み込んで急処置室に連れて来られることが多いため、電池を誤飲したことが見落とされてしまう例もある。大き目のボタン電池は、レントゲンでは効果と区別しにくいのだ。処置の遅れが、死亡の危険性を高めることになる。
電池を鼻に入れてしまうことは、鼻血や感染症、鼻中隔穿孔、瘢痕化といった深刻な損傷につながる。外耳道に入れてしまうと、皮膚や軟骨、鼓膜、耳小骨にびらんが起きたりする。これらは、より小型の1.5ボルトのボタン電池によって起きることが多い。
親の注意が不可欠
贈り物を受け取ることが増えるこの時期、子供を持つ人たちは、玩具をもらった場合には特に注意しなくてはならない。電池を入れる部分のふたがきちんと閉まっているか、ロックされているかを確認する必要がある。
また、電池が切れて取り出した後、廃棄する際にも注意しなくてはならない。おもちゃを動かせるほどの電力がなくなった電池でも、まだ電気を放出している。
スマートフォンやタブレット、その他の電子機器の使用が子供の脳の発達によくないことを示すデータは相次いで発表されている。加えてそれらに使われている電池が体に損傷を与える危険性があることにも、警戒しておく必要があるだろう。
子供が電池を飲み込んだり、鼻や耳に入れたりしてしまったのではないかと不安に思ったら、すぐに医師の診察を受けるべきだ。毒物を飲んでしまったのと同じように考える必要がある。