そんな生活の中で、ついつい、社会課題に意識が働いてしまう自分に気がついたんです。たとえば、子どもの予防接種を受けにくくて困れば、行政に問題があるんじゃないか、と分析してしまう。
自分は根っからの研究員気質だと自覚したんです。家族で東京に戻ってから、もとの上司が声をかけてくれて、99年に正社員として復職しました。
──復職後は、どのようにして働かれたのですか。
子育てとの両立は大変だったのですが、職場では、上司・同僚の支援を得て、柔軟に働かせてもらえたことで、続けることができました。
家族、特に母の助けも大きかったです。時間に制約がある中で、どう仕事の成果を出すか、よい経験を積むかを真剣に考えて働き、復職から約3年で主任研究員に昇格しました。
転機となったのは、2004年から3年間内閣府男女共同参画局男女共同参画分析官を経験したことでした。当社だけで研究員として働いていた時よりもぐっと知見やネットワークが広がりました。
内閣府での経験やアドバイスくださる学識・有識の先輩方に後押しされて、新しいマーケット開拓やバイネームでの執筆・講演活動に取り組むようになり、仕事の幅が広がったんです。
さらに良かったのは、外に出ることで自社の制度やマネジメントの課題を客観的に見られたこと。現在は執行役員のほかに共生社会部部長や女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室室長をしながら、社内をより働きやすくすることにも取り組んでいます。
──たくさんの肩書きをお持ちですが、矢島さんにとって、役職に就くということはどのような意義がありますか?
採用の権限を持って社内のダイバーシティを推進できたり、様々なマネジメントルールの改善に着手できるようになったのが、役職に就いて良かったなと思うことですね。
一般には、「ダイバーシティ」というと、企業の「多様な人材を活かす戦略」という意味合いが強いですが、私の根底にあるのは、“生きづらさを感じる人を減らしたい”という思い。
自分が不器用な子どもだったこともあり、そういう気持ちが強くあります。役員としては社内で、研究員としては社会全体で、ダイバーシティを推進して、生きづらさを感じる人が少ない社会の実現に取り組んでいきたいですね。
矢島洋子(やじま・ようこ)◎現在、執行役員、主席研究員、政策研究事業本部 東京本部副本部長 共生社会部長、女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室室長といった複数の肩書きを持つ。2004年から3年間、内閣府男女共同参画局男女共同参画分析官を務めたほか、10年からは中央大学大学院戦略経営研究科で客員教授としても活動している。2018年に「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2018」社会インパクト賞受賞。