「私たちは、他にも倉庫業務に特化したAIをいくつも開発しています。例えば、バーコードのずれを認識・学習するアルゴリズムです。バトラーは、倉庫の床に張り付けられたバーコードを認識しながらタスクを処理していくのですが、やはり時間の経過とともにバーコードが歪んだり、方向がずれたりすることは避けられません。そこで、そのずれ具合を認識・学習して、ロボットの行動にエラーが生じないようにするAIを開発しています」とアドバニ氏は言う。
ピッキングする商品の特徴を認識するAIもあり、柔らかいものや高価なもの、滑るものなど「ピッキングロボットには、処理するのが苦手な商品」をAIが瞬時に判断し、それらのピックは人間のスタッフにまかせるという仕組みだという。
グレイオレンジが目標に掲げるのは、人間とロボットの作業能力や効率性を同時に高めつつ、掛け合わせることで、倉庫一棟あたりのタスク処理能力を最大化すること。つまり、「インテリジェント・ウェアハウス」(Intelligent Warehouse)を実現することと言い換えてもよい。
「インテリジェント・ウェアハウスのコンセプトは、自動化という意味で、ファクトリーオートメーション、もしくはスマートファクトリーと混同されてしまうことがあるのですが、それらはあくまで人間の力を機械に置き換えることが主眼です。私たちはあくまで、人間とAI、もしくはロボットがいかに上手く協業できるか、また協業した上でいかに成果を最大化できるかに焦点をあてています」(アドバニ氏)
これまで、工場など生産現場では「人間の労働力をいかいに代替できるか」という文脈で、ロボットやAIの導入が模索されてきた。一方、アドバニ氏の話を聞いていると、倉庫においては「人間とロボットの協業を最適化するロボットとAI」がすでに登場していることに気づかされる。
倉庫という人目につかない場所で進む「機械との共生」は、テクノロジーファースト時代のビジネスや社会の在り方を考えていく上で、非常に示唆に富んだものとなるかもしれない。
連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
過去記事はこちら>>