2018年、ぼくたちの「現在地」を教えてくれる5冊の本

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2018年の世相を表す「今年の漢字」は「災」が選ばれた。地震や豪雨などによる被害は、わたしたちの暮らしが常に自然災害の脅威と隣り合わせにあることを教えてくれた。

一方で「平成」も終わろうとしている。この時代に起きた数々の出来事は、“平成”の語感には似つかわしくないものがほとんどだった。30年の間に世界は劇的な変貌を遂げ、日本社会も大きく変質した。後世の歴史家は、2018年をターニングポイントの年と指摘するかもしれない。

世界がこれからどこへ向かおうとしているのかは誰にもわからない。まるで海図もないまま航海しているようなものだ。そんなとき、本が道しるべになるようなことは、誰しも経験のあることだろう。今年発売された本にもヒントを与えてくれる名著がたくさんあった。

今回は年末にあわせ、わたしたちがいまいる場所を指し示してくれる本を選んでみた。2018年も終わろうとしているいま、わたしたちの“現在地”を教えてくれる5冊を紹介しよう。


『遅刻してくれて、ありがとう』上下 (日本経済新聞出版社)

トーマス・フリードマン(伏見威蕃訳)の新著が示すキーワードは、「加速化」だ。世界はいま信じがたいスピードで変化している。その速さはもはやわたしたちの思考や社会制度の整備が追いつかないほどだ。



著者によれば、加速化の原動力は、「ムーアの法則」「クラウド・コンピューティング」「地球環境の変化」の3つだという。昨日までは不可能だったことが今日には可能になるほどのスピードで進化するテクノロジーによって、いとも簡単に個人が世界を相手にビジネスが出来るようになった。これから数十億の貧しい人々が自らの才覚で続々とミドルクラスの仲間入りを果たすだろう。そうすれば地球環境は激変することになる。

すでに一部の地球科学者が「人新世(アントロポセン)」という年代区分を提唱している。プラスチックやコンクリートのような堆積物によって地表が覆われた現代は、これまでの完新世とは区分して定義すべきだというのだ。

豊かで快適な消費生活と「加速化」はトレードオフの関係にある。もはやゆっくりと自分の内側を見つめ直すような生活は望めない。こうした加速の時代に対処するために、世界中でさまざまな取り組みが生まれている。ぜひ本書でそのヒントを見つけてほしい。
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文=首藤淳哉

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