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2018.12.20 07:00

竹中平蔵、安宅和人、石川善樹、朝倉祐介、井上浄らが説く、2050年の世界

(右上から時計周りに)竹中平蔵、朝倉祐介、石川善樹、安宅和人、井上浄


谷本:朝倉さんは、いかがでしょうか。
 
朝倉:僕は一時期、山に篭って世の中に貢献しない生き方をしたら、どうなるのか試したことがあるんです。
 
そこで感じたのは、とにかく退屈ということ。ひたすら消費してGDP(国内総生産)に貢献しないと、多くの人は寂しくなるのではないでしょうか。学園祭で模擬店を出店するのと単純に顧客としてお店を訪れるのとでは、どちらが楽しいかという話ですね。
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僕も将来的には労働と遊びは溶け合うと思います。そのときに人材とお金と知恵が、必要な場所に必要なだけ流れる仕組みが求められるのではないでしょうか。現時点でそれが一番機能しているのは中国だと思います。
 
安宅:竹中先生は、どうお考えでしょうか。
 
竹中:繰り返しになりますが、将来何が起こるかは誰にもわかりません。それに備えるために用いるのが、テクノロジーなのではないでしょうか。
 
例えば、これまで多くの国では、なるべく制限をなくして企業が自由に動けるようにするのが「国家」の役割だと考えられていました。しかし、中国では国が積極的に動いてビッグデータを集めている。それによってアリババなどの企業が大きな発展を遂げたわけです。
 
そういう見直しが、あらゆる場所で起こるのがこれからの時代です。その礎となるシステムをつくれるかどうかがポイントで、あらゆる場所でそのための挑戦が始まるでしょう。「リープ・フロッギング」がまさにそうですが、日本は恵まれたポジションにいるせいでその流れに乗れないことも多いのが現状です。
 
そうした状況を打破する突破口のひとつは、日本人の感性です。例えば、私たちが当たり前のように使っている「人間」という言葉。「間が抜ける」などからもわかるように、日本人は「間」を非常に重視します。
 
つまり個人の価値を尊重する「Human Being」と違い、人と人との交わりを大切にするということ。こうした価値観に沿ったシステムをどうやってつくるのか、ですね。
 
谷本:では、安宅さんもお願いします。
 
安宅:3つあります。まず、いまは都市化が進み、それに適応できなかった場所は捨て去られつつあります。中長期的な視点を持つのであれば、都市ではない自然の地域とテクノロジーを共存させる方法が必要になるでしょう。


 
2つ目は、食糧不足の問題。ユヴァル・ノア・ハラリの著書『ホモ・デウス』では、現存する大型動物の約9割を人間とその家畜が占めていると書かれています。例えば、いま中国全部が日本くらいの豊かさになったら、それを支えるだけの食糧は地球には存在しません。人口拡大が予想される中で、ここをどう解決するか。
 
3つ目は、昔はエルニーニョ現象が話題になりましたが、あれは今から考えれば、人間が吐き出した熱を吸収した海の中の熱の”ムラ”でした。しかし、いまは海全体が熱くなってしまった。このままでは日本でも真冬にサイクロンが襲ってきてもおかしくなくなる。これを解決する熱制御、熱の固定技術が、地球全体を救うために必要な技術です。
 
僕たちの未来を決めるのは「妄想力」

谷本:多様な論点が出てきましたが、そろそろお時間です。最後に一言ずつ、2050年の未来に向けたヒントやアドバイスをお願いします。
 
井上:「さぁ研究だ!」の精神を持ってほしい。僕が研究を始めたのは、世界初の事実を自分の手で目の前で証明できると思ったからです。このワクワク感を全員が持てば、世界のあらゆる問題は解決できると思います。
 
石川:今後、世界の覇権を握るのはイスラム教徒だと言われていますが、ほとんどの日本人は普段、彼らと接することがない。日常ではあまり関わらないヒト、モノに触れていく心意気が、大切なのではないでしょうか。
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朝倉:未来は与えられるのではなく、自分たちでつくる。「We are the future」の精神を持つことが大切です。
 
竹中:過去と現在を変えることはできませんが、未来はいくらでも変えることができる。分からないことを頭から否定せず、分からないのだと受け入れた上で、チャレンジして欲しいですね。
 
安宅:妄想力を大切に。私たち人類は、これまで様々なことを妄想して、それを形にしてきました。大きな夢を描いて、どれだけ仕掛けていけるか。僕らの未来は妄想力が決めると思います。

文=野口直希 写真=小田駿一

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