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2018.12.19 17:00

若きファッションデザイナーが「バイオ素材」で服をつくる理由 #NEXT_U30

スペキュラティヴ・ファッションデザイナー 川崎和也

スペキュラティヴ・ファッションデザイナー 川崎和也

Forbes JAPANでは、次世代を担う30歳未満のイノベーターにインタビューを行う「NEXT UNDER30」をスタート。今年8月に開催した「30 UNDER 30」特集で取り上げきれなかった、知られざる若手イノベーターたちを継続的に取り上げていく。
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今回取材したのは、スペキュラティヴ・ファッションデザイナーの川崎和也。

川崎は、ファッションと最新テクノロジーを融合させ、情報技術の発達や深刻化する環境問題をはじめとした、ファッションに関わる倫理的な問題を提起する作品を数多く発表してきた。これまで、YouFab Global Creative Award 2017 入賞、WIRED CREATIVE HACK AWARD 2018 特別賞、STARTS PRIZE 2017入賞など、受賞歴も多数。

取材を経て、彼をファッションデザイナーと呼ぶことに迷いを覚えた。なぜなら彼は、ファッションデザイナーでありながら、バイオ技術を服に応用する研究者、ファッションとテクノロジーの架け橋となる技術者、環境問題に一石を投じる社会運動家など、多くの顔を持ち合わせていると感じ取れたからだ。
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今回は、彼を形成した幼少期の体験からファッション業界への提言まで、川崎和也の言葉の数々を紹介する。


現実に対する鬱憤とパラレルワールドへの憧れ

──川崎さんがいまされていることを紐解くためには、幼少時代から遡らなければいけないと感じます。小さい頃はどんな子どもでしたか?

幼い時から、とにかく他人とは別のことが好きでした。みんなが好きだった戦隊モノは嫌い、外で遊ぶのも嫌い、おままごとも嫌い。恥ずかしながら友達も少ない方だったと思います。でも小学校に入学すると、ひとつ楽しみができました。それが図書館でファンタジー小説やSF小説を読むことでした。

──小説の何に惹かれたのでしょうか?

現実は嫌いでしたが、小説を通じた妄想は好きだったんです。そのうち日常生活の中で、ことあるごとに「パラレルワールド」の存在を考えるようになりました。日常と小説が混ざる妄想はめちゃくちゃ楽しかった。中学生くらいまでは、SFやファンタジーを楽しみに生きていました。

特に、J・R・R・トールキンやミヒャエル・エンデ、アーシュラ・K・ル=グウィンなどをよく読みました。ファンタジー小説にはよく架空の地図や文字、絵画が載っているのですが、難しくて内容はわからなくても、そればかり眺めていましたね。ファンタジー小説で描かれる「世界観」が大好きだったのだと思います。

──その後、高校に入学します。なにか変化は?

徐々にコミュニケーションが得意になりかけていた高校時代も、周りにSFやファンタジーの妄想を共有できる人がいなかったため鬱憤が溜まっていました。SNSもまだそこまで浸透していなかったときです。自分の強い興味関心が周囲と共有されない3年間。何か物足りない気持ちをどこかに抱えていたとおもいます。

──それから、ファッションに出会ったきっかけを教えてください。

2011年、僕は浪人生活を経て大学に入学したのですが、その年に起こった東日本大震災が、ファッションの世界にのめり込んだ大きなきっかけになりました。

震災後当時、次第にファッションを批評する現象が起こりつつありました。「デザインは人々のために何ができるのか」を問い直すような言説が巻き起こり、デザイナーが自ら社会との接点を探りつつ、デザインの意義を人々と共有していこうというムードがありました。僕はその状況と対峙したとき初めて、「ファッションって、デザインって面白いな」と感じたんです。

多くの場合、ファッションは美術の一種だと捉えられることが多いと思います。天才デザイナーが作った奇抜な形や色の衣服を、豪華な晴れ舞台で発表する。確かにそれはファッション文化の一つのあり方だし、僕もファッション史を勉強しつつ、リスペクトを持っています。

しかし、ファッションデザイナーも適当に服を作っているわけではありません。世の中の現象や歴史を調査してコンセプトを練り上げたり、素材との密接な対話の中で高速で試作を繰り返したりと、ファッション特有の「創造性」は確かにあります。世の中の問題が単純には解決できない「意地悪な問題」になっている今こそ、ファッションの創造性が意味を持つ。そう考えています。
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文=田中一成 写真=柴崎まどか

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