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一般的には、服を着ることが好きでファッションデザイナーを志す人がほとんどだと思います。でも僕はそうではなく、ファッションデザイナーの考え方や、社会との接続方法に興味が湧いたのです。

例えば、環境問題という大きな問題は僕一人だけの力では解決できません。でも、問題提起から徐々に解決に近づけることならできる。様々なファッションデザイナーのやり方や考え方を知って、そう感じました。

──「ファッション」を媒介に、問題提起ができると。

はい。一部貧困の国々や少数民族を除いて、おそらくほとんど全ての人間が衣服を着ていますよね。よく考えるとそれって本当にすごいことだと思うのです。そこから考えることのできる、未来の人間の衣生活はどのようなものか?

新しい技術と連動しながら日々変わりつつある新しいファッションのあり方を世に問うてみたいと思うようになりました。

ファッション+テクノロジーの先へ

──川崎さんが手がける、ファッション×テクノロジーの作品はなぜ生まれたのでしょうか?

ファッションとテクノロジーの間には溝があると思っています。僕は、その溝を埋めたい。

最近はIT業界からファッション業界に対して、様々な新しいファッションのあり方が提案されています。例えば、Googleがジーンズブランド・Levi’sとコラボして、生地がタッチセンサーになっているデニムジャケットを作りました。また、ZOZOSUITのインパクトは賛否両論を含めて凄まじかった。プラットホームやビックデータを扱うIT企業が、ファッション業界に社会実装的なアプローチを仕掛けてきた例です。

また、バイオテクノロジーと素材開発の融合も今注目すべき領域です。山形県・鶴岡市に拠点をもつSpiberは、クモの糸を模倣したフィブロインというタンパク質でシルク糸を生産し、ゴールドウィン社と共同で強靭でかつ環境に良いマウンテンパーカーを開発しています。「素材」という産業の根っこからファッションを変えようという挑戦的な取り組みです。

僕はこうした状況を、ファッション業界全体がシリアスに受け止めるべきだと思っています。IT業界やバイオ産業側からのアプローチに対して、ファッション側からきっと何か応答できるはずだと。実際僕もGoogle ATAPとの共同研究に携わり、ウェアラブルテクノロジー前提の新しいファッションについてシナリオを制作。オーストリアで毎年行われるメディアアートの祭典・アルスエレクトロニカで展示発表を行いました。


(Speculative Fashionable Wearable, Daijiro Mizuno, Kazuya Kawasaki, 2017)

一口にファッションといっても、買い方、売り方、作り方と工程が分けられプレイヤーも異なる。売り方、買い方には様々なIT企業が参入し破壊的イノベーションを起こしている。問題は「作り方」です。「服をどう作るか」の部分は、デザイナーの得意分野なはず。

デザイナーの創造性を、現代的なテクノロジーの使用にも生かすべきだと。そのためにも、僕は、ファッションとテクノロジーの中間に立って、両者の架け橋になりたいと思っています。

──なぜそうおもうのでしょうか?

ファッションとテクノロジーの関係を遡ると、明治時代の人々にとって、布をつくる「紡績技術」は最新テクノロジーでした。昔、洋服は一番身近な高等技術だったということです。そう考えると、GoogleやZOZO、Spiberが取り組んでいる新しい素材の開発は、その歴史の延長線上にあるものです。

そんな観点から制作したのが、YouFab Global Creative Award 2017などを受賞した「Biological Tailor-Made(バイオロジカル・テイラーメイド)」です。「もしファッションデザイナーが素材を培養するところから服をデザインできるようになったら」という問いの下、僕自身が培養したバイオ素材を使って、着る人ぴったりの服を作りました。


(Biological Tailor-Made, Kazuya Kawasaki, 2017)

とにかく、「ファッションなの? テクノロジーなの?」といった皆さんの疑問を無くしていきたいですね。ファッションとテクノロジーは今、衝突している段階です。それらを混濁させ、調和に導き、最終的には新しい概念を作ることを目指しています。

文=田中一成 写真=柴崎まどか

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