ビジネス

2018.12.19

つくば市が「生活実験」を開始 マクアケと国内初の取り組みも

つくば市長 五十嵐立青(写真=小田駿一)

ブロックチェーン技術とマイナンバーカードを活用したインターネット投票の実証実験、ソフトウェアロボットを活用して市役所職員の業務を8割削減──。

これらはすべて、「科学の街・国際戦略総合特区」を掲げる茨城県つくば市の話だ。同市は、超スマート社会の実現に向けて、2017年5月から「つくばSociety 5.0社会実装トライアル支援事業」を実施している。

その中でも、昨今、力を注いでいるのが"持続可能なまちづくり"だ。実は茨城県内唯一の「SDGs未来都市」に選出されている同市は12月、新たに「Tsukuba Tomorrow Labo」というプロジェクトを立ち上げた。

市内にある有用な研究内容や技術と、民間ニーズや社会的な課題の解決策とのマッチング、先進的な取り組みをピックアップするなど、つくば市の新たなシティプロモーションとして「生活実験」を行なっていく。

12月5日、都内で開催された会見では、その実験の第一弾として、2019年3月21〜22日の2日間にわたって開催される「つくばVAN泊2019」が発表された。バンタイプの自動車を中心に働き、暮らす人たちやライフスタイルを指す、「VANLIFE(バンライフ)」を切り口に、“世界のあした的暮らし”を議論・提案していくという。

また、イベントの開催にあたって、つくば市は資金を調達するために、Makuake(マクアケ)で「ふるさと納税型クラウドファンディング」のプロジェクトを開始するという。

有望な技術を実社会に落とし込む

「つくばVAN泊2019」の発表説明会の冒頭、つくば市長の五十嵐立青は「Tsukuba Tomorrow Labo」の立ち上げの経緯について、こう語った。

「つくば市は150の研究機関、2万人の研究者を抱える強みを生かして、Society5.0の取り組みを進めています。本当に多くの素晴らしい研究所やさまざまな知識がある一方で、それらを実社会に落とし込めていない。そこに大きな課題を感じており、いっそのこと『つくば市全体を実験室にしよう』ということで、このプロジェクトを立ち上げました」



2015年、国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」。このアジェンダは世界で達成すべき17の目標と169のターゲットが盛り込まれており、「持続可能な開発目標(SDGs)」と呼ばれている。

つくば市も「誰一人取り残さない」社会の実現を目指し、「つくばSDGs未来都市先導プロジェクト」という取り組みを実施している。

「SDGs未来都市」に選出されているが、五十嵐は、「ただSDGsに取り組むだけでは、つくばの魅力は形にできないと思っています」と語り、つくば市が目指す理想の街のあり方はSDGsとSociety5.0が組み合わさった先にあるという。

「子育て、教育、働き方、住宅、介護、交通、健康、サービス、暮らしにまつわる市民のあらゆる課題に、多種な研究者が向き合い、つくば市内・市外の企業や団体とも力を合わせて、今までにない答えを出していく。テクノロジーと暮らしやすさの両方がある、つくば市だからこそ、テクノロジーが市民を幸せにしている社会をつくりだせる」

実際、つくば市ではすでに新しい技術を活用することで、CO2(二酸化炭素)の排出を68%削減に成功したほか、自動運転や遠隔医療、災害の予測システムの実証実験を行っている。
次ページ > なぜ「バンライフ」?

写真=小田駿一

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事