世界で注目を集めるベルリン在住アーティスト「塩田千春」とは

《どこかにいる私》2018年 (c)Chiharu Shiota/Blain|Southern London/Peter Mallet


──塩田さんの作品に関連性はありますか? それぞれの作品は独立したものなのでしょうか。

どの作品も人間のつながりを中心に展開しています。インスタレーション作品、彫刻や絵画は、人間のさまざまな側面、死、記憶、人間関係などを表し相互に関連しています。



《静けさの中で》2008年パスクアートセンター、ビール/ビエンヌ、スイス(c) Chiharu Shiota


また、同じインスタレーション作品でも、展示される場所によって異なる意味を生むことがあります。

「静けさの中で」という交錯した糸でできたインスタレーション作品をいくつかの場所で制作しましたが、毎回違った作品になるのです。

それは、その糸の空間がその場所ごとに、世界とのつながり方や表情を変えるからです。

──塩田さんの作品はエレガントで力強く、複雑です。ご自身の作品にダークな側面はありますか?

私の作品を「暗い」と言う人もいます。けれど私はそのような暗さを求めているわけではありません。人間の根本的な問題に取り組んだ時、どうしても生や死の問題に直面します。

私のコンセプト「presence in the absence・不在の中の存在」は感じることはできるけれど見ることはできない。そういったものは死を連想するようなダークなイメージになりやすいのかもしれませんね。

──尊敬するアーティストはいますか。

スペインを代表するロマン主義の画家フランシスコ・デ・ゴヤです。

「裸のマハ」「プリンシペ・ピオの丘での銃殺」などが有名ですが、 私は特に「理性の眠りは怪物を生む」に魅力を感じています。

1799年に出版されたゴヤ最初の連作銅版画集「ロス・カプリチョス(気まぐれ)」の中で、「理性の眠りは怪物を生む」は連作全体の精神を象徴すると言われています。

──世界中で塩田さんの作品は展示されていますが、これから展示会をしたいと思っている場所はありますか?

ドイツで20年近く暮らしていますが、日本での展覧会は毎回とても嬉しく思います。

今は、2019年6月に東京の森美術館で開催される個展「魂がふるえる」に全力を尽くしています。 約2000平方メートルの空間にこれまで作家として活動してきた20年間の様々な作品を発表します。作品を作っていると、どんどん新しいアイデアが湧いてくるので、アーティストという仕事は楽しいですね。

──最後に、日本の若手のアーティストへメッセージを。

私はたくさんの文化や人種が入り混じるベルリンという街をベースに活動していますが、やはり世界に出て、自分の立っている場所や環境を見直すのはとても面白いこと。

若いアーティストの皆さんにも、どんどん世界に出ていただきたいと思います。


シオタチハル◎1972年、大阪生まれ。現在はベルリンを拠点に活躍中。これまで世界各国で200本を超える展覧会に参加。2015年、第56回ヴェネチア国際美術展にて日本代表作家に選出される。2019年6月20日より、過去最大規模の個展「魂がふるえる」が森美術館で開催予定。

文=Yuri Yureeka Yasuda 構成=フォーブスジャパン編集部

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