ビジネス

2018.12.21

マックのV字回復、メルカリCMの炎上──「人格」がある会社にはファンがつく

左からナイアンティックの足立光、メルカリの小泉文明、慶應義塾大学の琴坂将広


テクノロジーは「PR」のあり方を変えていくのか?

琴坂:また少し別の議論をしていきたいのですが、今後のPRを考えていく上でテクノロジーとの関係性も重要になってくると思います。

例えばアメリカのとあるスタートアップは、自社のサービスに反対する自治体が出てきたとき、反対する自治体の中で最も反対している議員の選挙区で、最も自社のサービスを使いそうな人たちや自社を支援してくれそうな人たちに対して、「そういうアクションを起こさないでください」と議員に陳情するように依頼するメッセージを配信しているそうです。

彼らはテクノロジーを使ってピンポイントに、民主主義を操作していこうとしている。PRがテクノロジーとつながっていくと、すごく効果的である反面、人間の心や国家の仕組みがデータを活用する企業にハックされる要素が出てくると思うのですが、これはどう捉えればいいのでしょうか?

足立:そういうアプローチはすでに多くの会社などで実行されていて、いわゆる「インフルエンサーマーケティング」は同じようなことだ私は思っています。琴坂さんが仰っていた事例とは単純にレベル感が違うだけの話だと思いますが、どちらも影響力が高そうな人に良いことを発信してもらう、というアプローチですよね。

琴坂:すでにやられている、と。

足立:昨今、インフルエンサーマーケティングを耳にする機会が増えてきていますが、実は昔からあった考え方です。例えば、多くの人は「虎屋の羊羹は良いもの」だと思っているじゃないですか。その理由は皇室御用達だから。ある意味、皇室がインフルエンサーなわけです。実は「この人が言えば」「この人が使ってます」「この人がいいと言ってます」というアプローチの仕方は昔からやられていることだと思います。



琴坂:それがテクノロジーでさらに進化していくと思いますか?

足立:そうですね。今でも「YouTuber(ユーチューバー)」にはたくさんのフォロワーがいて、みんなチャンネル登録して見ていますよね。そういう意味では、割と近しいなと思っているんです。ツイッターでもそうですよね。

小泉:少し自社の宣伝で恐縮ですが、これからの時代、モバイルペイメント化がどんどん進み、消費がデータ化されていくと、購買過程が一気通貫で全部見える化していく。

インフルエンサーマーケティングもそうだと思いますが、今は仕掛けた施策が何となく消費に響いたかどうかは分かるけど、詳しいことまでは分からない。例えば、最近はフォロワー数の多い有名なインフルエンサーよりも、フォロワー数はあまり多くないけれど購買の背中を押すような消費に強いインフルエンサーもいると思っていて。

足立:全くそう思います。

小泉:まだ日本はキャッシュレス決済比率が20%ほどしかないのですが、今後キャッシュレス化が進み、消費行動がデータ化していったら、消費者の細かな動きもキャッチできるようになっていく。そうするとインフルエンサーへの情報の渡し方など、いろんなPDCAがもっともっと回っていくんじゃないかな、という気はしています。

琴坂:テクノロジーは、これまで大味に、「お客さん」や「政府」と言っていたものが、「この人たち」というように、より高い解像度で見えるようにした。そして今後は一人ひとりに対してアプローチを変えていかなければいけない時代になっていくということなんでしょうか?

小泉:いかにバランスを取るかだと思います。そんなに細かくやっていても、結局のところ大きなムーブメントは起きない。

足立:これは日本とアメリカの違いだと思うのですが、実は日本にそこまで影響力を持つインフルエンサーはいません。そういう意味では、消費者へのリーチに関してはまだ圧倒的にマスのほうが効果的なんです。アメリカだと数百万単位でリーチできるインフルエンサーが
芸能人でも政治家でもいますが、日本だと数十万程度。多くてもそれくらいなので、実は日本の有名インフルエンサーはアメリカほど効果的じゃないと思います。

小泉:メルカリは1回、全米の無料アプリのダンロードランキングで3位になったことがあって、それこそ『ポケモンGO』の次くらい3位ぐらいでしたね。それも一晩で3位になったので、何かがバグッたと思い、1〜2日信じていませんでした。(笑)



その裏で何が起きたかというと、「友だちを紹介したら、紹介したあなたにも3ドルあげます。両方に3ドルあげます」というキャンペーンが行われていて。そうしたらマイクロインフルエンサーが、自分のツイッターやフェイスブックにメルカリのことを書けば書くほど3ドルもらえるチャンスが増えるので、みんな書き込み始めたんです。それがすごい局所的に大量に行われた結果、テレビCMをやっているわけでもない、ジャスティン・ビーバーを仕込んでいるわけでもないのに、一気に3位まで上がりました。

そのときに、アメリカでの展開の仕方はこっちだと思って。よく「日本のテレビCMみたいなものがアメリカはない」と悲観的になりがちなんですけど、そうじゃないところに答えがあるんだなと思いましたね。
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写真=PR Table提供

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