足立:メルカリの事例はすごく稀有だと思います。私からすれば、今のメルカリの話は全社員が会社のPRを、使命ではなくミッションだと思って勝手にやっているということなんですよね。普通の会社に行けば分かると思いますが、世の中にはいまだに社員がSNSを使用することを禁止する会社もたくさんある。基本的には発信してはいけないほうが多勢だと思っています。
ほとんどの会社では一般社員は広報にタッチしてはいけないことになっており、現状、PRと言った場合、大体は企業広報に特化している。その中身を、製品やブランドなど、さまざまな領域に広げていくべきなのではないか、と思っています。
琴坂:それは少し時間をかけて、各部署にPRの責任を付与するということですか?
足立:先日、たまたま大手小売店の流通の人と話す機会があったのですが、流通にはマーケティング部がない。PRもあるのですが、実は企業広報しかやってない。一つひとつの製品のPRは各事業部が担っていて、素人がやっている。非常にもったいないですよね。
であれば、「PR部の中に製品PRをやるチームをつくって動かしてみたら?」という話をしていました。正直、ほとんどの会社ではPRが企業広報のみになっていて、事業活動のPR、採用のブランディングなどに全くつながっていないので、PRの領域を広げていくしかないかな、と思っているところです。
琴坂:PRの担当者は事務局のような動きをしているイメージがありまして。伝統的な企業の場合でも、自分でやるのではなく、いろんな製品の部署と関係性をコーディネーションしていく立場なのではないかな、と。きっとメルカンの場合も、自分でやろうとするのではなく、醸成する空気感を決めているという感じでしょうか?
小泉:そうですね。メルカンの場合、「バリューを必ず入れて話すようにしましょう」というのは大事にしています。その軸があれば、社員は自発的に動きやすい。例えば、「勝手にPRしていいですよ」と言ってしまうと、何かミスがあったときに怖いじゃないですか。
きちんと軸を1本通してあげると、最終的にはみんながバリューに帰結していく。1本筋の通った会社のラインができる感じですね。
足立:メルカリのバリューは「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be Professional(プロフェッショナルであれ)」ですよね?
小泉:そうです。会社の情報を発信する際の土台は整えてあげて、あとは自由度を与えてあげるようにしています。足立さんが仰ったように、そもそも大企業はソーシャルNGのところが多いですが……。
琴坂:そういう場合、どうすればいいんでしょう?
足立:いまだにパソコンを自宅に持って帰ってはいけない規則のある会社が普通にある。しかし、最もセキュリティが厳しい外資系銀行やIT系の会社でも、実はみんな家にパソコンを持って帰って普通に仕事してるわけです。理論上、会社にパソコンを置き、仕事とプライベートを切り分けることはナンセンスですが、そういうカルチャーになっている。
そうすると、さきほど申し上げたように「PR自体が大事です」「PRが経営に貢献します」といったところから、PRの革命をしていくのが最も現実的な気がします。
<後編へつづく>