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2018.12.19

アップルが遅ればせながら映画製作に乗り出した理由

(Photo by S3studio/Getty Images)


さらにこの業界再編成は、「出版はニューヨーク、映画やテレビはハリウッド」という棲み分けを壊しつつある。

NYに9割が集まる出版業界は、ネットコンテンツに押される形でNYからの流出が見られるし、同時に、セレブプロデューサーとセレブ監督とセレブ俳優が大金を投じてつくってきた「ハリウッド村映画製作モデル」も、数1000億円を狙うのでなければ、そもそもハリウッドである必要もないということになる。アップルが業務提携したA24スタジオはNYの映画会社である。

しかし再編が進んでも、すべての関係者に共通するのはアカデミー賞への希求らしい。ストリーミングモデルを代表するアマゾンは、力作はできるだけストリーミング開始前にたくさんの劇場公開にかける。劇場公開の逆手を取って20年商売にしてきたネットフリックスも、これはという映画は、アカデミー賞の候補作の資格を得る最低限の劇場数で劇場公開をしている。

ITの巨人アップルが、設立してまだ6年のいわば無名だったA24スタジオと組んだのも、アカデミー賞受賞スタジオ(第89回アカデミー賞で「ムーンライト」が作品賞、助演男優賞、脚色賞を受賞)だったからだと言える。業界が再編され、ネット配信を通じて百花繚乱となる時代を迎えても、すべてを束ねた権威の中心になるアカデミー賞とは、あらためて影響力の大きな賞だと思わされた。

連載 : ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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