アジア事情に詳しいセンシングアジア代表取締役松風里栄子氏は、次のように語ります。
「インドは、車が入る余地のない狭い道路が多く、無計画につくられ住所の番地は順番がぐちゃぐちゃ。グーグルマップが機能しない場所も実に多く、ムンバイの中心で300m 先にたどり着くまで30分近くかかったことがありました。混とんとしたインフラの中で、どのようにビジネスにするか、日本や欧米とは全く違う発想が必要になります」
例えば、インドの経済都市グルガオン。2本の地下鉄やバスが走っていますが、駅やバス停からオフィスなど目的地への移動は、これまでは3輪のオートリキシャーなどに頼ってきましたが、朝夕のラッシュ時はまさにカオスで、ずいぶんと時間がかかり、サービスレベルもひどく、大きな問題でした。
インドの伝統的な交通手段、リキシャー(davide bonaldo / Shutterstock.com)
それが今は、スピーディーに目的地に着けるバイクタクシーが使われるようになりました。4年前にはBaxi、2年前にBikxieというサービスが登場し、今ではウーバーを含む数社があります。ヘルメットを拭くシートや髪に汚れが付かないシャワーキャップなども提供するなど、サービスでも競っています。女性専用のBikxie Pinkというサービスも登場。人に限らずモノの配送も担っています。
なお、インドではネット配車サービスに登録された車両の約4分の3が二輪車。それにともない競争は激化し、先行スタートアップの一つMTaxiがドライバー獲得競争に耐えられず、昨年、店じまいしたほどです。
松風氏は、「インドでは、バイクタクシー利用は特定の州に限定されていますが、他州への拡大の可能性は大きいでしょう。あるエコノミストによると、世界の都市部の『ラストワンマイルのプライベート移動手段』市場規模は、6兆円近くにのぼる可能性があります」と、その発展ポテンシャルを指摘します。